本研究は,音声言語・手話言語をともに含む人間の言語に普遍的な文の構造という観点から,日本手話のWh疑問文を分析したものである。特に,手話言語のWh疑問文の特徴であり音声言語には通常見られない,Wh要素が文末に現われる文末Wh文や,同一のWh要素が文中の二ヶ所に生じる二重Wh文を取り上げた。研究成果として,日本手話のWh疑問文では,一見語順が音声言語と異なっていても,その構造は音声言語と共通すると考えられることを示した。同時に,ある要素を文の構造上どの位置で音声化又は手話化するかといった点(即ち,言語の外在化に関わる点)では,音声ではなく手話という方法に依存した選択肢が許されることも示唆された。
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