研究課題/領域番号 |
26370468
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研究機関 | 神戸松蔭女子学院大学 |
研究代表者 |
西垣内 泰介 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (40164545)
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研究分担者 |
田窪 行則 京都大学, 文学研究科, 教授 (10154957)
郡司 隆男 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (10158892)
田村 早苗 北星学園大学, 文学部, 講師 (90728346)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 視点 / モダリティ / 意識 / 証拠性 / ダイクシス / 時制解釈 |
研究実績の概要 |
「阻止効果」について:2014年度には日本語と中国語の対照研究が進展したが,2015年度にはこれについて査読者から指摘されたいくつかの重要な問題について考察を深めた。この問題は2016年度にも継続して考察をつづけ,具体的な成果を完成させる見通しである。 「指定文」コピュラ文との関連:2015年度には「指定文」などコピュラ構文の研究が進み,この中で「指定文」のひとつの項として「証拠性」を主要部とする補文を含む構文についての考察を進めた。また,西垣内が提案するコピュラ文の統語構造と派生に対応する形式意味論の枠組みを郡司が発展させている。当初予想していなかった研究の方向が広がりつつあると言える。 ダイクシスの多様性:石垣島、宮古島において視点に関する文法現象を調査した。特に宮古島において、ダイクティックセンターと空間オリエンテーションの関係、また、その時間に関するオリエンテーションに関する実験を行った。その結果、宮古島の話者は絶対オリエンテーションと相対オリエンテーションの両方の視点を併用することが分かった。 視点と時制解釈:知識・認識にかかわる概念の分析範囲を広げ,関係節にも分析を広げた。そのうえで,関係節も理由節と同様に,主体の認識が関係する場合としない場合で,時制の基準時となりうる時点に差があることを示した。これにより,時制解釈の視点による分析をB-C類従属節に広く適用できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
刊行論文,口頭発表ともに着実に出しており,おおむね予定通りの進展をしている。 分担者それぞれの分野での研究は順調に進呈しており,それぞれ成果を発表している。2015年5月にはこの科研費グループを中心にしたシンポジウムを開催した。 それに加え,「指定文」コピュラ文との関連という,当初予定していなかった方向の研究が進展している。 また,田窪が担当しているダイクシスの多様性に関する研究が具体的な形で発展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
意識と証拠性:中国語、韓国語の再帰表現解釈について、「意識」、「証拠性」が関与するケースについて、研 究協力者Huang との連携で考察を深め、日本語で現れる現象との相違点とその理論的説明の可能性を追求する。 同様の考察をスカンジナヴィア言語の再帰表現解釈についても行う。 「阻止効果」とエンパシーおよび人称システム:「視点」に関する研究では、久野(1978), Sells (1987) など で観察、議論された「主観的表現」(「不可解にも」、「愛しい~」)、ダイクシスのかかわる表現(「自分の右 側」vs.「彼の右側」) など、「証拠性」などの「意識」に関わる構文と「共感」(エンパシー) に関わる構文を 区別するのに有用と思われる言語表現がある。これらの表現の機能について詳細な観察と分析を行い、再帰表現 解釈、阻止効果への関与を考察し、他の言語や方言などでのこれらの言語表現の性質とふるまいについて研究する。 モダリティとの関係: POV 投射についての構造的分析を進め、Modal に関わる投射と視点に関わる投射の関係 、モダリティ表現の構造的位置についての考察を行う。 「指定文」との関係:「指定文」についての統語的分析と形式意味論の研究の連携を強め,より幅広い言語現象についての研究をすすめる。 ダイクシスの多様性:宮古島のオリエンテーションの実験結果を受けて、比較のために滋賀県で同様の実験を行い、両方の結果をまとめてCognition、Cognitive Scienceなどの国際雑誌に投稿する。共著者のRafael Nunez氏との論文執筆の打合せのためにハワイ大学に行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の家族の健康上の理由で出張を行うことに支障があった。そのため予定していた米国への研究出張を取りやめ,その他の国内への研究出張もほとんど行わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年は9月に米国研究出張を行うほか,国内への研究出張も活発に行う予定である。
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