研究最終年度にあたる平成30年度には、論文2点を発表し、研究発表1件を行った。さらに、図書1点が近刊の予定である。 論文「ゲルマン語形容詞の歴史的発達 (1)-ゴート語、ドイツ語、北ゲルマン語」と「ゲルマン語形容詞の歴史的発達 (2)-西ゲルマン語 (1)」は、一連のゲルマン諸語のデータをもとに形容詞の強・弱変化の歴史的変遷を文法化、脱文法化、外適応の観点から体系化したものである。現在、残りの西ゲルマン語に関する論考を執筆中で、全3編で完結の予定である。研究発表「ドイツ語から見た西ゲルマン語形容詞の語形変化―階層表示、平行表示、シンタグマ表示」は、その内容に基づいている。また、近刊の著書として『オランダ語の基本』(三修社) がある。本研究の成果のオランダ語への応用であり、日本におけるオランダ語の文法記述として最大の規模を誇る。現在、最終校正に入っており、オランダ人話者による音声資料の録音が完成され次第、刊行されることが決まっている。 また、海外旅費を活用して、平成30年8月26日~9月3日にベルギー・レーヴェン大学での第20回オランダ語学文学国際会議 (20e Colloquium Neerlandicum) に参加し、オランダ語・ゲルマン語関係の資料収集を行った。同会議では、書籍として世に出た最大のオランダ語文法書 ANS (Algemene Nederlandse spraakkunst) の改訂に関するシンポジウムが有益だった。オランダ学士院 (KNAW) では、人文科学部門で過去最高額となる多額の財政援助を投入し、オランダ語、西フリジア語、アフリカーンス語の大規模な文法記述を Taalportaal としてインターネットで公開している。英語を記述言語とする同サイトとANSの対比は、オランダ語と関連言語の記述に新天地を切り開く試みとして大いに参考になった。
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