今年度前半期には山岳コルワ(エルンガ・コルワ)語の既存の録音の書き起こしを行い、調査の際の調査項目作成を行った。後半に行ったインド・チャッティースガル州での現地調査においては、書き起こしテキストにグロスと訳を付し、文法の理解に努めた。その結果、これまで未来の接辞を考えていた形態 -ta が、他のケルワル語の継続相マーカー -tana に対応し、そこから叙述マーカーの a の脱落と語末の -n の脱落という二段階の音変化を経て生じた形であることが明らかになった。また、否定を表す複数の形式のうち、mer と ero の使い分けについて、従来まったく知られていなかったが、今回の調査によって、動詞の動作のアスペクトに対応することが明らかになった。 マルト語については動詞活用の起源について考察し、論文 Origin of redundant agreement in Malto -ke converb としてドラヴィダ言語学会 (Dravidian Linguistic Association) の学会記念誌 V.I. Subrahmoniam Commemoration Volume に寄稿した。また3月に行った現地調査においては、これら動詞形を再確認し、あわせて新たな動詞活用形を収集した。 クルフ語に関しては、格の用法や従属節のさまざまな文例を収集し、記述文法を執筆するための資料収集を行った。
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