研究課題/領域番号 |
26370476
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
秋廣 尚恵 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (60724862)
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研究分担者 |
川口 裕司 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20204703)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フランス語話し言葉 / 因果関係を表す接続詞 / コーパス / アクセント句・イントネーション構造 / 変異 / 会話データ |
研究実績の概要 |
秋廣尚恵は、統語分析を継続して行った。昨年度取り扱った因果関係を表す接続詞の中から、とりわけ、話し言葉コーパスに多用される parce que, puisque の接続詞に焦点を当てた研究に取り組んだ。その成果は、27年度中に、2回の研究発表、及び1本の論文で紹介。さらに、28年度上半期に、2本の論文の公刊が予定されている。 川口裕司は、韻律アノテーションに関して幾つかの先行研究を参考にし、Piet Mertensが開発したProsogramを使用して、試みにフランス語ネイティブと日本人フランス語学習者の平叙文および疑問文のアクセント句・イントネーション構造の類似点と相違点を分析し研究報告を行った。またフランス語会話モジュールを変異という観点から音声・語彙を中心に分析し、論文を公刊した。 話し言葉データの拡充という点については、当初の予定では、リール第3大学にて会話データを収録する予定であったが、同大学の協力者やインフォーマントの都合がつかなかったため、急遽予定を変更し、フランス国立東洋言語文化大学(INALCO)にて、INALCOの中村弥生准教授、竹村亜季講師、パリ第8大学の神山剛樹准教授、パリ第3大学の古賀健太郎博士課程大学院生の協力を得て、同大学の学生をインフォーマントとして、約35時間分の会話データを収録した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統語分析においては、parce que,puisque が、談話標識として機能している現象が話し言葉に顕著に見られることを明らかにした。また、談話標識として機能する parce que や puisque の機能を日本語「から」の言いさし表現と対照させることにより、話し言葉の談話構造における接続詞/コネクターの機能をより広い観点から俯瞰する研究を進めることが出来た。研究を進める過程では、海外協力者であるパリ第3大学のDebaisieux教授をはじめ、様々な研究者と意見の交換を行うことが出来た。 韻律的分析においても、日本人学生のフランス語と対照したネイティブフランス人のアクセント句・イントネーション構造の類似点や相違点を明らかにすることによって、フランス語話し言葉の特徴の一端を明らかにすることが出来た。 話し言葉データの収録も順調に進み、2週間の短い調査期間ではあったが、35時間にわたる大きなデータを蓄積することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、収集したデータの転写、転写校正などの加工作業を進めていく。 統語論(秋廣)、音韻論(川口)の両面から統合的アノテーションのあり方を検討しつつ、データ分析をさらに進めていく。 秋廣は、7月にフランスのトゥール大学にて開催予定である世界国際フランス語会議において、話し言葉における parce que の談話標識的機能の問題について発表を行う。 また下半期には、3年間の総括として、海外から話し言葉研究の専門家を招き、講演会とワークショップを開催したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度では、9月にデータ収集を行った。またそのための人件費・謝金を支出した。また、調査のための外国出張、及び研究発表のための国内出張の旅費を支出した。一方、データの転写、加工には取り掛からなかった。また、物品も小額の出費に収まったので、余剰金を28年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度は、国際フランス語学会での口頭発表のために外国出張を予定している。また、下半期には、3ヵ年の研究成果をまとめたワークショップを計画している。このワークショップには話し言葉研究のフランス人研究者も招待する予定であり、その旅費と謝金を計上する。さらに、データの転写、加工を予算の可能な範囲で進める計画である。
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