研究実績の概要 |
最終年度(平成28年度)には、日本語の語彙的使役と生産的使役の意味の違いの中心となる、直接使役と間接使役の違いの習得に関して、平成26年度、平成27年度の研究成果を基に論文にまとめる作業を主に行った。平成26年度には日本語の自動詞と語彙的使役動詞(他動詞)の習得研究成果に関して、語彙的使役と多くの場合語幹を共有する自動詞の方が語彙的使役動詞よりも習得が早いと考えられる実験結果を学会発表し、平成27年度には語彙的使役動詞と生産的使役動詞の習得研究成果に関して、生産的使役動詞が表す間接使役の意味よりも、語彙的使役動詞が表す直接使役の意味の方が習得が早く、生産的使役の場合にも大人と異なり直接使役の意味で解釈する場合が多くみられるという実験結果を学会発表した。その2つの研究成果を子供の自然発話の発達と比較検討し、またHarley (1995, 2008)、Murasugi, Hashimoto, Fuji (2007)等の先行研究で提案されている語彙的使役と生産的使役の統語構造と照らし合わせながら、生産的使役動詞の中の使役形態素(させ)を子供が大人とは異なる統語的位置に置いているために、生産的使役を間接使役ではなく直接使役の意味で子供が誤って理解してしまうのではないかという提案を現在作成中の論文の中で行っている。作成中の論文はJohn Benjamins Publishing Companyから発行される予定の図書(共著論文集)に掲載される予定で、現在第1稿の査読が終了し、第2稿を提出したところである。
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