本研究では、日本語の使役動詞の意味と構造に関する幼児の獲得について実験的手法による調査を行った。語彙的使役動詞は主に直接使役の意味を、生産的使役動詞は主に間接使役の意味を持つが、その区別を3~6歳代の幼児が獲得できているのかについて、質疑応答法、絵画選択法、真偽値判断法を用いて実験調査を行った。その結果、語彙的使役動詞の直接使役の意味の獲得は早く、4歳代で既に獲得しているが、生産的使役動詞の間接使役の意味の獲得は6歳代でも50%前後という低い正答率で、その獲得は遅れることが明らかとなった。遅れの原因は、生産的使役動詞の複文構造と使役形態素「させ」の獲得の遅れに起因するのではと考えている。
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