前年度に続き、派遣留学を経験し就職をした学生にアンケート、フォローアップインタビューを実施し、異文化接触場面で習得した学術リテラシーおよび異文化能力が社会適応に与える効果を調査するため追加データを収集した。また、これまで収集したデータを総合的に分析し、リテラシー、異文化能力、アイデンティティ変容とキャリア形成の相関性を再検証した。その結果、他者とのアイデンティティ交渉に取り組みつつ英語・母語リテラシーと異文化能力を高めていくことで、異文化接触現象を批判的に考察し肯定的に受け入れる能力を身につけていくことが判明し、このような異文化接触の管理が社会的場面でのリテラシー適用やアイデンティティ形成の促進にも繋がることが示された。さらに、短期留学、交換留学システムとキャリア形成教育の整合性を高めることで、海外留学プログラムを活用し母語と第二言語リテラシーの融合によって学術能力の促進を図る言語横断的学術リテラシー教育の体系化を検証した。これらの分析結果を第5回国際言語管理シンポジウムおよびニュージーランド・オーストラリア合同応用言語学会で発表し、国際的学術誌に論文を投稿すべく執筆を開始した。研究成果の一部をまとめた著書“The management of literacy and identities through study abroad from a translingual perspective”を含む編著「Interests and Power in Language Management」がPeter Langより2018年もしくは2019年に刊行される予定である。
|