研究課題/領域番号 |
26370487
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
池 貞姫 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (60294782)
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研究分担者 |
趙 義成 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (20343725)
伊藤 英人 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (80251560)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 戦後初期の在日朝鮮人学校教材の収集 / 在日朝鮮人学校教材の成り立ちの解明 / 国際情報交換(ソウル) |
研究実績の概要 |
本研究は、戦後初期における在日朝鮮人の言語資料、とりわけ朝鮮人学校の教科書や副読本などの教材を中心に、収集・整理・電子データ化を行い、それらに表れた言語的特徴を明らかにするとともに、一世から二世へと朝鮮語を継承するための朝鮮語教育がどのようなものであったか、その実態を探ることを目的としている。 初年度である平成26年度には、まず、東京外国語大学朝鮮語研究室・朝鮮大学校在日朝鮮人関係資料室等で関係資料の収集に務めた他、個人が所有する資料の調査にも広くあたり、電子データ化を順次行っていった。次いで、収集した教材の資料について、国語教科書・児童雑誌を中心に、表記・文体・語彙等の言語学的観点からの分析に着手した。また、資料関連の背景事情に詳しい専門家に助言・協力を得て、戦後初期の民族教育に関わった当事者(東京在住者・広島在住者)にインタビューを行うことにより、当時の民族教育のより詳しい背景や在日朝鮮人の民族意識や朝鮮語教育についての知見が得られることとなった。さらに、調査資料の解題を十全に行うために、本国との連続性を詳細に追う必要性が生じたため、教材に掲載された本国作家(朴泰遠・尹石重・尹福鎮等)に関連する資料や本国の新聞・雑誌資料、植民地時代の朝鮮総督府発行の教科書類を調査することとなり、その調査を通じて教材の成り立ちの一端を明らかにすることが可能となった。教材は、植民地時代の形跡を残しつつも、戦後/解放後の本国と同様に、朝鮮語の重要性を強調し、擁護しようとする姿勢が濃厚であることが、その記述内容から窺えるものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的である、戦後初期における在日朝鮮人の言語資料収集については、各種機関のみならず、個人所有のものについても広く調査することがかなった。また、目的としていた資料の十全な解題のために、専門家の助言をえたり、当時の民族教育に関わった者への聞き取り調査、教材の成り立ちに関わる資料調査を行うこともできた。これまで収集した資料のデータ化や言語的特徴についての分析は着手したものの、本格的な考察は今後の重要課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、初年度に引き続き、資料収集と精密な書誌学的研究を行っていくとともに、電子データ化を行っていく。また、得られた資料データに基づいて言語学的観点や教育学的観点からの分析を続けて行っていく。さらに、戦後初期における在日朝鮮人による朝鮮語教育の実態を解明するため、関係者へのインタビューを随時行っていく。調査資料の解題を十全に行うために、本国との連続性を詳細に追う必要性が生じたため、韓国における関連資料収集・専門家による助言をより多く得ることが課題となっている。そのため、韓国への出張回数を増やしたり、韓国の専門家の招へいやセミナー実施も行っていく所存である。なお、研究成果については今夏の学会や今後のセミナー等で発表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費については、打ち合わせ場所を東京としたり、大学業務が集中したため当初予定よりも少ない額となった。また、人件費についてはアルバイト学生の都合により当初予定よりも少ない額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者の次年度使用額は旅費として、研究分担者から外れた者の次年度使用額は研究代表者が、セミナー実施のための招へいに係る費用として執行することとする。また、残る研究分担者の次年度使用額は、調査・打ち合わせのための旅費として執行することとする。
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