研究課題/領域番号 |
26370488
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
板橋 義三 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (50212981)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 朝鮮語のアクセント型 / 日本語のアクセント型 / アクセント型の同源性 / 韓国南部沿岸方言 / 九州北部沿岸方言 |
研究実績の概要 |
朝鮮語方言のアクセントの変遷に関する先行研究の成果を確認しつつ、韓国の朝鮮語のアクセントの史的変化を確定し、また地域類型論による朝鮮語方言のアクセントの方言周圏性を1つの作業仮説として取り入れる。即ち、ソウルの無アクセント(1型アクセント)が最も新しいアクセント形式であり、慶尚道方言、成鏡道方言のそれが最も古いと仮定し、中期朝鮮語からの変遷を確定する。その後に、韓国南部方言の慶尚道方言と全羅道方言を詳細にフィールド調査し、その対岸の九州北部沿岸の方言群を調査し、その調査結果から原九州北部方言を確定し、その日本と韓国の方言を突き合わせてみる。 平成27年度の調査地が変更になったため、特に韓国における平成28年度の調査地も変更せざるを得なかった。本来の平成28年度の韓国の調査地は馬山と普州であったが、この地点はすでに調査を終了しているので、光州市と全羅道谷城郡に変更した。後者の全羅道谷城郡は非常に町から離れているため、到着までに非常に時間がかかり、バスとタクシーを使用して調査地にやっと着くことができた。しかし、予定通り、それぞれ3名ずつ被験者に調査を行うことができた。 それに対して、日本は長崎県の松浦市と平戸市が予定としての地点であったが、それに付け加え、伊万里市でも調査をすることができた。松浦市ではお一人が入院されたので、その方に対する調査は不可能となり、その地点での被験者は2名に減ったが、平戸市では被験者の友人2名が駆けつけてくれ、そこでは5名の被験者を得ることができた。予定外の伊万里では3名の被験者を確保することができ、今回は予想以上の成果を上げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に平成26年度は予想以上に韓国の南部を地域ごとに被験者数と調査地域数を確保し、その数は予定以上に調査が実施された。また平成27年度にも予定通りの被験者数と調査地域数が確保されたのみならず、当初予定にはなかった、大邱もその調査地域が含めることができ、被験者は少し少なかったが、2名確保できた。この地点の調査の重要性は方言ピッチアクセントの北限を知り意味で行ったものである。これに引き続き、平成28年度には予定とは異なるが、光州市と全羅道谷城郡の被験者3名ずつに対して調査を行い、予定に沿った進捗状況である。 それに対して、日本における調査については、平成28年度は予定していた長崎県松浦市と平戸市を訪れ、予想以上の人数を確保するとともに、予定に入っていなかったが、地域的に重要と考えられる伊万里市も含めて調査を実施した。実績概要でも述べているように、松浦市での体調を崩し入院された方1名がいたが、逆に従来考えられない、被験者数の予定外増加があり、調査の時間を増えたものの、その方言のアクセントの成果がより高い裏付けを得ることができ、信ぴょう性が高いことを裏打ちする調査ができたと考える。従って、以上のことから今年度の調査は全般的に予想を幾分超えることができるだけのものになったと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、昨年同様資料も文献も最大限に利用し、次のような要領、手順、方法に従って、進めていく。韓国においては、新羅の古都、慶州市と蔚山市の慶七道方言のアクセント調査を行う。一方、日本でおいては壱岐と対馬でのアクセント調査を行う予定にしている。韓国においては様々な理由から上記の2地点での調査を見合わせてきたが、今年度が最終調査年となるため、今回はこれらの地点を見逃すわけにはいかない。平成29年度の語と文のアクセントのデータベースから行った分析結果を報告書の一部としてまとめ、学会で口頭発表を行い、その後、それを論文として著す予定にしている。 最低限調査する語彙は予めリストを作成準備しておく。まずそのリストに従って、調査する基礎語彙は単音節語から5音節語まで200項目程度の語、句・文アクセントだけに焦点をあわせ収録する。次に語と文レベルに渡り、1音節語から5音節語までの名詞、動詞、形容詞の基礎語彙を取り上げ、高感度マイクで録音する。韓国では被験者は役場や教育委員会(日本ではさらに社協にも依頼)に相当する組織機関がないので、学生のつてにより依頼し、その土地生え抜きの古老(80歳以上)3名程度を紹介してもらい、アクセント・文の細部まで収録、録音する予定である。平成29年度に調査・収録した単音節~5音節の語(名詞、動詞、形容詞)のアクセントからアクセント型に従って、詳細に分析しまとめる。次にその方言のアクセント型を調べる。そのアクセント型が隣接地域の方言のそれと異なっている場合にはその拡張について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度から平成29年度への直接経費の使用が143,589円発生したので、本来平成29年度の直接経費600,000円の昨年度分の143,589円が上乗せされ、743,589円となり、それを平成29年度の原資として使用することになった。本来、使用額としては十分あったものが、さらに増加したために余剰額となったことによるものである。 実際には本年度28年度には韓国でのアクセント調査に補佐してもらう予定だった学生が今年度も同行できず、その交通費等がその分不要になったために、支出額が減額したことによるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は韓国の調査地は東側にあたる新羅の古都、慶州と蔚山、そしてできればもう1か所を含めて予定しているが、昨年度からこの地域の被験者を確保しようとしていろいろな形で依頼しているが、現時点では上記の2か所が精いっぱいかもしれず、正に被験者の確保の可能性次第である。その点では韓国人学生の同行のための旅費と謝金に充てる予定であるが、その額については上記の調査地、各調査地における被験者の確保の可能性次第で異なってくる。また被験者への謝金に充てる予定である。
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