研究課題/領域番号 |
26370496
|
研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
高野 照司 北星学園大学, 文学部, 教授 (00285503)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | アイデンティティー / 言語イデオロギー / グローバル化 / バーバルガイズ / スタイル変異 / Rbrul / 言語態度 |
研究実績の概要 |
本年度(27年度)は、社会心理学分野および言語態度研究における文献レビューを行い、調査地であるニセコ地区での実施に適合するかたちで、話者の文化的自己観(アイデンティティー)、土着志向性、および共通語や地域方言に対する言語イデオロギーなどを調査するための調査票の作成を完了した。 また、言語態度研究の文献レビューから得られた知見を元に、マッチドガイズ手法の応用型であるバーバルガイズ手法を採用することとし、音声による話者評価実験のための音声刺激と調査票の作成を完了した。 さらには、申請者が別プロジェクト(基盤B、分担者)で行ってきた札幌市方言名詞アクセントの共通語化に関する実時間パネル調査と連動させるために、名詞アクセントの変異・変化を調査するための調査票も準備した。札幌市方言実時間調査との連携により、北海道の中心都市(札幌)で観察される変異・変化の動態とニセコ地区でのそれとを比較をすることができ、調査結果の考察により有益となる。 本年度の後半は、上記の各種調査票を用いたフィールドワークを再開し、現在までのところ、新規で2名の住民との調査を完了している。また、昨年度までに調査済みである20名のニセコ住民に対し、再調査の依頼の文書を送付し、近日中に再調査を予定している。 これまで収集してきた発話データの分析も同時進行で行ってきた。特にカ行子音の有声化に焦点をあて、各被験者が社会言語学インタビューにおいて話す様々な話題に関連した規則的変異を見極め、地域社会の急速なグローバル化に対する話者のイデオロギーの在り方をこの規則的変異の重要な動機付けの一つとして議論した。 上記分析作業においては、統計的解析における新たな進展もあった。Rを用いた多変量解析(Rbrul)に精通することができ、混合効果を考慮したより精緻な分析が可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の目的であった各種調査票の開発と制作、及び、それらを用いたフィールドワークを開始することができた。また、既存の発話データの分析も継続的に行っており、特にRを用いた多変量解析プログラム(Rbrul)による混合効果モデルの活用が可能となり、統計的解析における新たな次元が開けた。分析結果の一部は、本年度(27年度)6月に開催されるSociolinguistics Symposium 21(スペイン・ムルシア大学)において口頭発表を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
各種調査票を用いたフィールドワークのさらなる進展を目指す。これまで調査が済んでいるニセコ住民に再度接触し、追加調査の依頼をする。また、同時進行でRbrulによる統計解析を含めた分析作業を進め、最終年度(28年度)末までに結果を総括し論考にまとめる。現時点までの中間期のまとめを、28年度6月に開催されるSociolinguistics Symposium 21(スペイン・ムルシア市)において口頭発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
フィールドワーク時に用いる各種調査票の完成が年度後半になったため、年度当初予定していたフィールドワークに費やす予定の経費が十分に支出されなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
調査票は完成し、今年度末よりフィールドワークを再開した。今後は調査のための出張旅費、調査時の被験者への謝礼、既存データおよび新規収集データの分析作業のためのアルバイトへの謝金等に支出を予定している。
|