平成26年度においては、既存の日英語対訳コーパス中の日本語文及びその英訳文の構文解析は順調に進み、いくつかの学会および論文集でその解析結果に基づいた分析結果について発表した。特に、"A Study of Syntactic Typed-Dependency Trees for English and Japanese and Graph-centrality Measures"と題した博士学位請求論文(早稲田大学受理)は、依存文法とグラフ中心性に関してそれまでの私の研究をまとめたものであり、英語と日本語の対訳ペアそれぞれの依存木のグラフ中心性を比較すると、英語文のほうが日本語文よりも度数中心性も近接中心性も小さい傾向にあり、つまり英語文はそれに対応する日本語文よりも深い構造を持つ傾向にあることが数値的に示された。 平成27年度においては、日英語の依存木間の構造的不一致(Structural divergence)の概念を導入し、特に英語コーパス学会では「日英語パラレルコーパス中の対訳文間における格助詞「が」を伴う名詞句の依存関係の構造的不一致」と題した研究発表を行い、そこでは日英語パラレルコーパス中の日本語文で格助詞「が」が使われている単文が英語対訳文でどのように訳されているかに注目して、その対応パターンを構造的不一致の概念に基づいて分類した。 平成28年度においては、"Dependency Types in Learner English and Authentic English"と題して環太平洋応用言語学会にて研究発表を行い、日本人英語学習者の産出した英語テキストと、ネイティブスピーカーの産出した英語テキストとで、頻出する依存関係に差異があることを指摘した。
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