研究課題/領域番号 |
26370501
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
尾形 こづえ 青山学院大学, 文学部, 教授 (90194422)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 間接目的 / 動詞構文 / 直接目的 / 前置詞 / フランス語 / コーパス / データベース / 統辞機能 |
研究実績の概要 |
フランス語において構文の中心をなす動詞に注目し,現代フランス語基本動詞の統辞構造と意味構造の関係を,大規模コーパスの検証に基づいて詳細に分析・記述することが研究全体の目指すところである。本研究では他動詞グループに注目し,そのうち直接・間接他動構文(特にa-N およびde-N)の両方が可能な動詞に対象を限定し, このような他動詞一つ一つについて直接他動構文(N-V-N)・間接他動構文 (N-V-de-N / N-V-a-N) 間の対立を統辞と意味の観点から捉え, 一つの動詞に認められる直接他動構文と間接他動構文間の対立に,共通する傾向が存在しているか否かを明らかにすることを目指している。 平成26年度は研究の第一段階として現代フランス語において直接他動構文と間接他動構文(N-V-de-N または N-V-a-N)の両方が可能な動詞の資料母体を作った。その際,パリ東マルヌ・ラ・ヴァレ大学言語学科の研究グループが行なっている動詞研究,及び動詞構文辞典を参照して,直接他動構文と間接他動構文の両構文が可能な動詞を抽出し, 更に頻度の高い構文の対に研究対象を限定した。 研究期間の一年目は直接目的と間接目的de-Nの両構文が認められる他動詞に注目する予定であったが,研究の順番を変更し,直接目的と間接目的a-Nの両構文が認められる頻度の高い他動詞の方から始めることにし,資料母体と分析の枠組みを用いて penser sa politique / penser a ses amisのような対立を実際の使用の中で文脈を考慮に入れて検証した。この結果,直接目的 penser N の用いられる頻度は間接目的 penser a-Nに比べて明かに低く, 比較的新しい用法であること,名詞のタイプにも特徴があり, 抽象度の高い全体的捉え方を表していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は研究の第一段階として現代フランス語において直接他動構文と間接他動構文(N-V-de-N または N-V-a-N)の両方が可能な動詞の資料母体を作った。その際,パリ東マルヌ・ラ・ヴァレ大学言語学科の研究グループが行なっている動詞研究,及び動詞構文辞典を参照して,直接他動構文と間接他動構文の両構文が可能な動詞を抽出し, 更に頻度の高い構文の対に研究対象を限定した。 研究期間の一年目は直接目的と間接目的de-Nの両構文が認められる他動詞に注目する予定であったが,研究の順番を変更し,直接目的と間接目的a-Nの両構文が認められる頻度の高い他動詞の方から始めることにし,資料母体と分析の枠組みを用いて penser sa politique / penser a ses amisのような対立を実際の使用の中で文脈を考慮に入れて検証した。この結果,直接目的 penser N の用いられる頻度は間接目的 penser a-Nに比べて明かに低く, 比較的新しい用法であること,名詞のタイプにも特徴があり, 抽象度の高い全体的捉え方を表していることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の二年目は主として間接目的de-Nと直接目的の対立に注目し,現代フランス語において直接他動構文とdeを伴う間接他動構文の両方が認められる高頻度の他動詞に限定し,平成26年度に構築した資料母体をもとに,統辞・意味の観点から検証する。この観点から,traiter(ゼロ/de), juger (ゼロ/de), parler (ゼロ/de), changer (ゼロ/de), user (ゼロ/de)等の直接他動構文(主語+動詞+目的補語 / que 節/ inf )・間接他動構文(主語+動詞+de 目的補語/ ce que 節/ inf )の対立を対象とする。 第一の段階では一つの動詞に認められる直接他動構文と間接他動構文間の対立を統辞・意味の観点から捉える。主語のタイプ,間接目的の限定辞の有無,名詞句の抽象・具体といった統辞・意味特性を記述する。同時に,コーパスの中で構文の使用頻度にも注目する。第二段階では個々の動詞の直接・間接他動構文間,例えばchanger (ゼロ/de),traiter (ゼロ/de), juger (ゼロ/de)の対立に認められた統辞・意味特性に共通する何らかの一般的傾向が認められるか否かを検証する。 直接他動構文とaを伴う間接他動構文の対立について得られた結果と直接他動構文とdeを伴う間接他動構文の対立を比較し,直接他動構文と間接他動構文間の対立に共通する傾向が認められるか検討し,研究成果を論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は一年間在外研究のためフランスに滞在し,パリ東マルヌ・ラ・ヴァレ大学言語情報自動分析研究所に於いて研究を進めていたため,申請当初考えていた同研究所に赴いて動詞構文のコーパスを構築するための旅費・滞在費を使用しなかった。また,日本国内で購入する必要のあるデスクトップパソコン,プリンター等の大型の物品,国内で出版されている言語学関係の図書を購入しなかったため,残高が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は平成26年度の残額と27年度の配分額を次のように使用する。パリ東マルヌ・ラ・ヴァレ大学言語情報自動分析研究所の言語自動分析システムUnitexを利用して当該動詞の統辞構造に関する電子化された資料を抽出するため, 夏休み中に渡仏する必要があり, 旅費を使用する。また, 容量の大きいデスクトップパソコン, プリンター,分析結果の記録媒体として外付けハードディスク,USBフラッシュメモリ,DVD-Rを購入するため物品費を,研究書購入のため図書費を使用する。
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