研究課題/領域番号 |
26370502
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
岡本 順治 学習院大学, 文学部, 教授 (80169151)
|
研究分担者 |
大薗 正彦 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (10294357)
宮下 博幸 関西学院大学, 文学部, 教授 (20345648)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 心態詞 / 終助詞 / 知識の共有 / 感情のコード化 / 話し手の視点 / 知識のアップデート / 言語運用モデル |
研究実績の概要 |
2016年度は、前年度(2015年)8月のミュンヘン大学(LMU)での各メンバーの研究発表に継続する形で、プロジェクト研究が進行した。宮下は「感情とドイツ語の心態詞」と「感情と終助詞」の比較分析を進めて、言語運用モデルに関する考察を行った。大薗は、「視点と心態詞・終助詞」の比較研究を翻訳資料や映像資料を用いて行った。岡本は、発話産出実験の結果をまとめ、心態詞と終助詞の機能的類似性の他に、「驚き」を表すとされる心態詞や終助詞を含む文にイントネーションがどのように関与しているのかを中心に研究を進めた。これらの研究成果は、2016年10月23日に関西大学で開かれた日本独文学会のシンポジウム「心態詞はなぜ使われるのか?― 心態詞の出現する状況と認知」の中でプロジェクトメンバー3人によって発表された。岡本は、心態詞研究の近年の動向をまとめた上で、現在のいくつかの課題を紹介した後、「『驚き』に関する心態詞と終助詞の比較」を行った、宮下は「心態詞の感情伝達機能」の中で、従来、避けられてきた感情との関係を捉える試みを紹介し、大薗は「心態詞の義務性をめぐって」の中で、実は心態詞が使われる義務的環境があることを実証的なデータを用いて明らかにした。 当初の予定では、第1班は発話実験の結果を、第2班は動画資料の分析結果を、第3班は会話コーパス資料の分析を通じて得られた知見をもちより、言語運用モデルの開発を2016年度は行う予定であった。しかし、動画資料の分析には予想以上の時間が必要となり、文字化されたデータと実際の発話状況の関連の分析がまだ不十分である。現在までの研究で、当プロジェクトで射程に入る言語運用モデルは、少なくとも共有知識のアップデートに関するモジュール、感情のコード化に関するモジュール、話し手による視点に関するモジュールを含むことになるところまでは、議論が煮詰まったと言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の岡本は、発話産出実験の結果データのまとめを終え、「驚き」に関する心態詞と終助詞の研究に着手しているが、2016年度に体調をくずし(自己免疫疾患)、さらに親の介護に多くの時間を取られたため、言語運用モデルに関する理論的研究が進んでいない。宮下は、感情のコード化に関する理論的側面の考察、及び動画資料の分析がまだ終了していない。大薗は、コーパスによる実証的分析を行ってきたが、視点の問題との関連で,「独り言」における心態詞・終助詞の使用の分析の必要性を認識しているが、まだ本格的に着手できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
1年間の延長が認められたので、これまでに行ってきた研究を振り返りつつ、以下の点に関して議論して、言語運用モデルを作り上げることを目標とする。 (1) 心態詞と終助詞が共有する機能を明確化する(同時に、違う点を浮き彫りにする)、(2) 知識に係る心態詞・終助詞とならんで、感情のコード化に係る心態詞・終助詞の具体的側面を明らかにする、(3) 話し手の視点が反映された心態詞・終助詞の用法を整理し、それらが言語運用上で果たす役割を議論すると共に、(4) 「独り言」における心態詞と終助詞の比較分析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
プロジェクトの進捗状況が当初目指した目標まで到達していないため、1年の延長を申請し、認められた。この1年間でプロジェクトとして使う経費としては、かなり少ないが、物品や図書の購入以外の用途で有効活用したい。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究会の開催に使うか、Web ページにおける情報発信に使うか、どちらかの用途を考えている。
|