研究課題/領域番号 |
26370502
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
岡本 順治 学習院大学, 文学部, 教授 (80169151)
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研究分担者 |
大薗 正彦 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (10294357)
宮下 博幸 関西学院大学, 文学部, 教授 (20345648)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ドイツ語の心態詞 / 日本語の終助詞 / 言語運用モデル / 知識管理 / 共有知識 / 視点の違い / 感情の活性化 / 発話行為 |
研究実績の概要 |
2017年度は、前年10月23日に開催された日本独文学会でのシンポジウム(当科研費グループ主催)「心態詞はなぜ使われるのか?心態詞の出現する状況と認知」での内容の総括と、言語運用モデルの骨子を固めることが主なテーマとなった。実証的なデータとして検討されたのは、心態詞が典型的に現れる環境、心態詞が共存できる文脈、心態詞がセンシティブに反応する要素の3つである。これらは、2017年12月9日、オーストリア言語学会(クラーゲンフルト)でのOkamoto (2017)の発表でその概略が示された。当発表では、心態詞・終助詞の生起条件を一括して「感受性」の観点から位置づけ、言語内的環境(文タイプ、発話行為)だけでなく、言語外的環境(共有知識、状況から得られる情報)が資源として比較された。 岡本の発話産出実験の結果が顕著に示すように、日本語の終助詞の出現はドイツ語の心態詞の出現よりはるかに多い。その理由は、Okamoto (2017)が主張するように、日本語では「記述」や「報告」という発話行為においても聞き手の存在が強く意識されることにあり、大薗 (2018: 38)は、このような事態を「日本語母語話者は、臨場的に、視点を重ね合わせながら見ている」と説明している。ドイツ語の心態詞においては、聞き手の関与はそれほど大きくなく、むしろ、話し手の知識管理(話し手が聞き手との知識のずれを伝達し、同期しようとする行為)と、発話行為の強弱調整機能が中心となる(Okamoto 2017: 256)。当プロジェクトで用いたコーパスにおいては、両方の言語で明らかに感情的表出が顕著な場面での終助詞並びに心態詞の出現に、ある種のパターンが見られた。ICLC14におけるMiyashita(2017)の発表は、心態詞が「感情の活性化」を促すと主張しているが、そのメカニズムはまだ十分に解明されているとは言いがたい。
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