研究課題/領域番号 |
26370503
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
高田 博行 学習院大学, 文学部, 教授 (80127331)
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研究分担者 |
細川 裕史 阪南大学, 経済学部, 准教授 (60637370)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ドイツ語史 / 言語規範 / 話しことば / 書きことば / 国語教育 / 大衆化 / 都市化 / プロイセン |
研究実績の概要 |
研究代表者は、19世紀における話しことば性の様相について考察するために、19世紀の学校における標準的書きことばの扱われ方に注目し、19世紀前半の文法教育について調査し、次のような認識を得た。19世紀に入ると、プロイセンは農制、軍政、教育制度など一連の近代的な改革を行い、教育全体のシステムを人口増加と産業化に対応させる必要があった。そのため、母語と外国語の教育によってコミュニケーション能力を高め、自然科学の教育によって技術力を養成することが求められた。1830年頃までは、学校教育においてまだ規範文法が支配的であったが、しだいに、生徒の思考力を養成するような文法が要請された。1830年代は、指導権が貴族、教会、王室にはなく、商業、工業、科学の手に移りゆく時代へ転換した。この進歩主義の要請に応えられたのは、論理文法であった。19世紀半ばには、論理文法が開花する時代が到来した。 研究分担者は、19世紀後期の作家による作品を対象に、当時の日常的な「話しことば」の描かれ方を通じて、当時の言語意識を調査した。フォンターネの『ナシの木の下に』(1885)を対象に、文学作品に基づく言語意識史研究の問題点を考察した結果、文学作品における「話しことば」的な変種は、作中人物の特徴づけのために用いられる傾向があり、作中で描かれる時代・地域に関する言語意識を純粋に反映しているとは言えないことが明らかになった。また、シュトルムの『人形つかいのポーレ』(1874)も調査し、両作品における会話文と地の文の統語構造を比較した結果、両作品ともに、会話文では、なるべく従属文を避け、8語以内の短文を好む傾向がみられ、また地の文にはみられない文法的に不完全な文が使用されているなど、「話しことば」的な言語現象がみられた。こうした傾向は、同時代人が抱いていた日常的な会話文に対する共通認識の一例といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「標準語と日常語に関する19世紀ドイツメタ言語言説コーパス」について1860年分までおよそ完了することができ、19世紀の文学作品における話しことば性についても調査を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
「標準語と日常語に関する19世紀ドイツメタ言語言説コーパス」の作成と分析について1890年代まで進めるとともに、他のドイツ語史研究者を交えて研究代表者と研究分担者とが今まで以上に頻繁に討議することにより、本研究課題の達成をより確実なものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
とくに物品費について、予定よりも少ない支出で抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した予算を、2016年度に書籍購入に当てて有効に執行する。
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