研究課題/領域番号 |
26370504
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
渡辺 学 学習院大学, 文学部, 教授 (00175126)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コミュニケーション / コミュニケーション能力 / 日本語学習 / 文体 |
研究実績の概要 |
まず、7月28日に、第一回研究会を学習院大学において行なった。最初に渡辺が、テーマ全体への導入として、定評のあるH. Paul の辞典(独々辞典)における "Stil“の意味記述を抜粋・紹介し、’style’、「文体(スタイル)」との異同を考えた。特定の表現が用いられるグループ内での親疎関係に着目すべきであるとの意見が出た。ついで、連携研究者南氏が、ゴフマン社会学、エスノメソドロジー的関心から、以前の科研(研究代表者渡辺、研究課題番号22520480)でも取り扱われたロボットの機能を提示する会話場面を、「身体(ボディ)」に着目して分析した。スタイルとコミュニケーションの問題を考えるヒントが得られた。参加院生も含めた質意義応答により、テーマ全体の問題点のありかを探るよい機会となった。 9月6日、第二回研究会(学習院大学)では、日本語学習、日本語教育、談話分析にお詳しい熊谷智子氏(東京女子大学)に、日本語学習者ペアによる読解後の再話活動についての専門的知識の提供をいただいた。「読むこと」と「話すこと」がどうリンクするのか、また、日本語非母語話者が日本語を使用すること自体、異文化コミュニケーションの状況に直結しているように思われるなかで、再話の仕方の特徴は何かを考え、コミュニケーション能力についての知見が深まった。さらに、連携研究者森澤氏からは、ドイツを舞台に16世紀の都市間コミュニケーションについての研究報告があり、同田中氏からは、日本語のスタイルを考える上での基礎ツールともなる国立国語研究所の書き言葉コーパスのデモをしていただいた。質疑応答においては、共通語の形成過程に関わるものなど、多言語社会の現況を問題関心とするが多く、専門分野と分析対象とする言語を異にする研究者同士の対話、意見交換はおのずと境界横断的となり、自分の視点を相対化し精緻化するのに大いに役立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の成果は、上述の2回の研究会にほぼ限定されてしまう。 当研究計画の推進は大幅に遅れているが、それは以下の理由による。不可測だった健康上の理由である。8月に渡辺の体調がすぐれず、ドイツ行きを補助金の枠内で行なうことを断念した。また、11月に体調を崩して3ヶ月入院し、その後も年度末まで療養、加療を続けた。このため、この時期に予定していた研究会、外部講師の招聘などはすべて中止となった。また、「決定的な出来事」のデータについても集積する機会を逸した。海外共同研究者との意見交換も進んでいない。始動をもうすこし早くすればよかったというのが反省点である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度も療養・加療を続けているため、まずは健康回復・管理を前提としながら、研究計画のなかで行なう課題の優先順位を明確にし、できるものから順次行なっていく。連携研究者や外部講師との研究会が最優先で、ついで既存データの言説分析。そのあとに海外共同研究者との意見交換を位置づける。これは、招聘に限定せず、メール等大いに活用する。3年間にわたる予算執行の規模を縮小することも最終的には視野に入れる。与えられた枠内で対照社会言語学の相貌が明らかとなるよう、全力を注ぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は代表者が健康を損ねたため、十分な研究計画の推進が不可能であった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、既存データの言説分析のための図書の購入や連携研究者の海外出張、さらには、研究会開催の費用(出張費)などに、平成26年度に執行できなかった部分も含めて充当していきたい。また、連携研究者用のパソコン購入も考えている。
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