研究課題/領域番号 |
26370507
|
研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
劉 穎 成城大学, 文芸学部, 教授 (10307118)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 女書歌 / 楽音 / 声調 / 胡美月 |
研究実績の概要 |
この研究の目的は女書歌の節回しとリズムのルール及び歌と歌い手の共通点と相違点を明らかにするのである。研究方法は現地調査を行い、そこで収集したデータを整理、分析し、さらに考察を通して研究結論を出すことである。26年度は以下のように進めた。 1.H26年度は現地調査を2回行った。H26年7月30日~8月19日(北京・武漢・江永県)であった。北京では社会科学院資料館と各図書館を巡り関連資料を収集し、また現地調査を順調に運ぶために江永県方言研究専門家及び首都師範大学吟唱研究中心の諸研究者と調査内容と方法について意見交換をした。武漢ではある女書研究者を取材し、保存されている貴重な故女書伝承者に対して行ったインタビューと古い女書歌の音声資料を聞かせてもらった。江永県では高齢女書伝承者から新しい女書歌を収集、また女書園と夏季女書学習班に取材し、女書文化伝承の新動向を調査できた。2回目はH26年12月25日~H27年1月6日(江永県・北京)、現地調査では高齢女書伝承者だけでなく若手伝承者の歌も収録した。北京では女書研究関係者を尋ね、調査データの整理と考察方法について意見交換をした。 2.H27年3月21~23日に北京で開かれた「武漢中日語言文化教学国際学術シンポジウム」に参加し、“女書歌的拖腔与節奏”(女書歌の節回しとリズム)という題で、それまでの調査データに対する分析、考察結果及び今後の研究課題について発表した。 3.H27年3月出版した成城大学文芸学部紀要『成城文藝』第230号(P49~23)に、「胡美月の女書歌の楽音と声調との対応関係」という題で、今年度収録した若手女書伝承者胡美月の歌のメロディに対する分析と考察を通じて、節回しの仕方は高齢女書伝承者と70%以上共通しているのに対して、抑揚が大きい現代歌曲の影響と決まったパターンで歌う傾向がある研究結果をまとめ、発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H26年度の研究計画は高齢女書伝承者何艶新と何静華を調査対象にする予定だったが、2回目の調査に何静華は外出したため、代わりに、27年度の調査対象の若年伝承者胡美月等の歌を収集し、さらに考察結果を論文にまとめて発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
いままでの音声データも新しいデータもできる限り健在している女書伝承者の歌を収録、整理し、さらに収集した音声資料を採譜、分析して、その実態を明らかにしていく。 具体的には以下の通りに運びたい。 平成27年度では、1)引き続き現地へ行って、高齢女書伝承者、数年前に認められた若手「女書伝承者蒲麗娟、胡欣等に対しても取材をし、習得した歌の収録を行い、さらに習得における難点や感想を調査且つ分析して、女書文化の継承を探る。2)引き続き収集した資料と収録した音声資料を整理、分析して、結論に導く。3)高齢伝承者と胡美月以外の若手伝承者の相違点を探り、女書の今後の習得と伝承について考える。4)女書流行地域の周辺の村で女書文化との関連について調査を行う。特にかつて娘にしか伝えない文字があったと言われている「城歩瑤郷」について調査を行う。5)中国吟唱研究会を訪問して、中国古代から現代までの吟唱発展史に関する資料を収集し、さらに、収集したデータの分析と考察、特に女書歌の吟唱との関連について意見交換する。 平成28年度では、1)新しい資料収集と新しい歌の収録を行い、女書歌の音声資料のデータを充実し、より客観的に女書メロディとリズムの検証を行う。2)女書歌のメロディと密接な関係がある城関土話の使用実態調査、特に若年層の方言離れの実態調査を行う。3)現地調査によって得られた方言の現状の結果を踏まえて関係研究者と、女書習得の難易度から女書文化の発展の可能性について考える。4)三年間に収集した作品と歌の音声資料を統括的に分析考察し、それまでの研究結果に対する検証結論をまとめ、研究成果として論文にまとめ発表する。 さらに、年度を問わず、取材した内容と収集した作品及び収録した音声資料を整理、分析して、その結果を調査レポートや研究メモ、または論文にまとめて学術刊行物などに発表する。
|