研究実績の概要 |
本研究では、話し言葉における外国語学習者のレキシコンの特性が、音声産出と知覚にどのような影響を及ぼすのかに焦点を当て、知覚・産出実験、文献調査、および音声コーパスの調査によって、その実態とメカニズムを多角的な方法を用いて明らかにするものである。平成28年度は以下の課題に取り組んだ。 (1)本年度は最終年度ということで、本研究の総括としてこれまで行ってきた研究について論文執筆を中心に行った。日本人英語学習者の母語におけるレキシコンの特性である語彙近傍密度についての研究では、日本人母語話者で英語力が異なる成人を対象とした知覚実験を行った。その結果、英語力が高いと思われる日本人母語話者であっても、スペイン語母語話者とは異なる語彙近傍密度の影響があることが明らかになった。この研究成果を論文としてまとめ、アメリカ音響学会学術誌に投稿し、採択された(Yoneyama and Munson, 2017) (2)非対立的音声変化の語彙表示 アメリカ英語では歯茎閉鎖音/t d/が語中で弾音として発音されることについて,日本人英語学習者による発話・聞き取りに関する研究を行った。英語の弾音の発話については,英語圏滞在経験のある学習者はある程度適切に産出できることが明らかとなったが,弾音の聞き取りも正確に行えるかを検証するため,弾音を含む英単語を刺激音声とした語彙判断課題の実験を行った。その結果,学習者は英語/t d/が弾音ではなく歯茎閉鎖音[t d]として発音された場合のほうが単語を正しく認識する率が高いことが見出された。この成果をアメリカ音響学会・日本音響学会合同会議(2016年11月,ハワイ)での招待講演で発表した。
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