研究課題/領域番号 |
26370523
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
橋本 邦彦 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80156281)
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研究分担者 |
三村 竜之 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00647662)
塩谷 亨 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10281867)
島田 武 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90322875)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 渡島半島 / 漁業方言語彙 / 魚加工 / 魚種名 / 生態的要因 / 社会的要因 / 言語的要因 / 比較調査 |
研究実績の概要 |
2015年9月に渡島半島東岸部の旧椴法華村(現在、函館市富浦町及び八幡町)、2016年2月に西岸部のせたな町において、それぞれ実地調査を行い、5名の調査協力者より漁業関連の方言語彙、特に、スルメイカ関連語彙、タコ漁関連語彙及び魚種名を、音声、意味、用法、背景情報等を併せて聞き出し収集することができた。魚種名には市場ではあまり流通せず、専ら地元で消費されるものが多くあり、これらは従来刊行されている北海道魚類図鑑や方言辞典において未収録であったり、指示対象魚に異同のあることが数多く発見された。収集したデータは、2015年度に集められたデータを補充・修正する役割を果たし、分類・整理する作業を通して、渡島半島東岸部と西岸部の語彙を比較し、類似点と相違点を具体的に抽出することができた。また、両者の要因と考えられる生態的に条件づけられた要因、社会的に条件づけられた要因、言語的に条件づけられた要因の3つが相互的に作用することによって、漁業方言語彙が成立するメカニズムを提示することができた。なお、調査を進める中で、津軽海峡を隔てた本州側の方言語彙との密接な関係が明らかとなったので、2016年1月に岩手県立大学、岩手大学、岩手県立図書館で文献・資料収集を行った。これは、今後の津軽海峡圏における漁業関連方言語彙の比較研究への準備ともなっている。 研究成果の一部は、3編の学術論文、「渡島半島西岸部せたな町の漁業方言語彙~東岸部旧椴法華村との比較の視点から~」室蘭工業大学紀要、第65号、2016年、41-52、「渡島半島東岸部旧椴法華村の漁業方言語彙について~西岸部せたな町との比較の視点から~」北海道言語文化研究、第14号、2016年、119-145、「青森県における魚類等の方言名について」北海道言語文化研究、第14号、2016年、93-118として公刊されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渡島半島東岸部の調査協力者及び西岸部の調査協力者より100語余りの漁業関連方言語彙について、「使う」、「使わない」、「聞いたことがある」の観点から確認調査をし、その作業を通して、新しい語彙や興味深い背景情報等を引き出すことができた。また、比較をする上で、使用状況の未確認であった語彙についてもかなりの数確認することができた。それによって、東岸部と西岸部の方言語彙の比較調査研究をより精密に遂行できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
渡島半島東岸と西岸部との間でかなりの程度双方向的な漁業関連方言語彙の比較調査が進み、先行文献にない語彙や用法・背景情報等が収集されたので、これをデータベース化できるように分類・整理し、音声データ、静止画及び動画などの資料を加味した上で、より完成度の高い語彙集を作成したい。この語彙集では、各市町村史や自費出版の著作、地元で発行された資料集、方言辞典など、従来個々別々でしか見ることのできなかった情報を、横断的に参照できるようにしたい。また、この作業を通して、生態的に条件づけられた要因、社会的に条件づけられた要因、言語的に条件づけられた要因が相互に影響し合うことで漁業方言語彙が成立するという仮説の証明に資する研究の基礎を築いていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者、分担者とも、当初予定していたよりも出張費がかからなかったため、当該年度の所要額に達しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
予定している調査のための出張費にあてる。 最終年なので、研究成果をまとめるのに必要な文献や物品の購入費、印刷費等に使用する。
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