渡島半島西岸部せたな町に3回、東岸部旧椴法華村に2回の合計5回にわたる実地調査を通して、それぞれ地元の調査協力者から、漁具、漁法、魚加工、魚名称、風や潮流、伝統行事に関連した特有の漁業方言語彙を収集した。これらの語彙を比較の視点から分類・整理し、使用状況、意味・用法を中心にできるだけ詳細に分析し、説明を施した。この比較により、渡島半島の両側で用いられていた、あるいは用いられている語彙の共通点と相違点が浮き彫りにされ、その背後で働く生態的要因、社会的要因、言語的要因の三つの要因が相互に作用し合って、方言語彙を生み出していく事実を解明した。
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