研究課題/領域番号 |
26370524
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大木 一夫 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00250647)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 日本語史 / 言語史叙述 / 日本語史叙述 |
研究実績の概要 |
日本語史研究は、日本語の歴史的な事実を相当程度明らかにしてきているが、従来は、日本語の歴史を歴史として叙述するということの検討が不十分であり、「事実の羅列」になりがちであった。そこで、本研究では、(1)言語史における歴史叙述の方法についての基礎的検討を行い、(2)その方法論にもとづき、日本語文法史における具体的事例をとりあげ、言語史叙述を試みることを目的とするものである。 平成26年度は、このうちの基礎的検討を中心に研究をすすめた。言語史研究は、一般的な歴史叙述と比較したときに、どのような点で同じであり、どのような点で異なるのかという視点から検討を進めた。それにあたっては、歴史一般の叙述理論の検討が進んでいる歴史哲学における議論である「歴史の物語り論」を中心に検討を加えた。その結果、言語史叙述においても、歴史叙述は「物語り」的構造をとることになり、そのような形で叙述されることになるということを確認した。この物語り的歴史叙述構造においては、相前後する2つの時点の出来事の記述のほかに、その2点を何からの形で組織化・統合化されるということが必要なのであるが、言語史叙述において、2点を組織化・統合化するものとして、少なくとも、変化に対する言語史的意味づけ、変化の因果関係、言語変化の型・方向性という点があることを明らかにした。すなわち、これは言語史叙述は一般的な歴史叙述に比べると、叙述の構造については基本的に同じであるが、複数の出来事どうしを関連づける方法が異なるということを意味する。以上のように、どのようなことを述べれば言語史の叙述になるのか、ということの基本的な側面について、おおむね明らかにすることになったと考えられる。 また、次年度以降におこなう言語史叙述の方法をふまえた日本語史叙述の実践のためのデータ収集の方向性についての検討もすすめ、データ収集を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は言語史叙述の方法の基礎的検討を行うことを中心課題としたが、この点については、他の歴史叙述にかかわる分野における動向の把握がさらに必要な可能性があり、また、上述の成果以外の叙述理論についての把握・分析があり得るものの、おおよそ、言語史叙述を一般的な歴史叙述と比較したときの異同についての帰結を得ることができた。したがって、おおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)他分野における歴史叙述の方法の議論の把握、動向の分析、また、「物語り」的構造をとらない言語史叙述があり得るのかどうかといった基礎的側面のさらなる検討をすすめていく必要がある。 (2)次年度以降の歴史叙述の実践にあたり、言語史叙述理論にもとづいた日本語史叙述のあり方をより具体的な形で検討していく必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
日本語史叙述の実践についての作業の一端を次年度に回す部分があったため。すなわち、必要となる図書の一部は、具体的に実践をすすめる次年度以降に購入し、また、データ整理にかかるアルバイトも、次年度に本格的にすすめる予定であるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
日本語史叙述の実践を本格的にすすめ、必要図書、入力・整理等にかかる謝金などに当てる予定である。
|