研究課題/領域番号 |
26370527
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
川野 靖子 埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (00364159)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 壁塗り代換 / 格体制の交替現象 / ヴォイス / 位置変化 / 状態変化 / 意味類型 / 餅くるみ交替 |
研究実績の概要 |
今年度の研究成果は以下の通りである。 (1)格体制の交替現象とヴォイスの現象の違いを原理的に明らかにした。 能動文・直接受動文等のヴォイスの現象と、壁塗り代換等の格体制の交替現象を比較し、両現象における形式の交替が根本的に異なる原理で起こることを明らかにした。具体的に述べると、能動文・直接受動文は、同じ事柄的意味を表しつつ叙述事態の層において異なる意味内容を表すという関係にあり、話し手がどの事態参画者に視点を置いて述べるかによって格形式が交替する。これに対し、壁塗り代換は同じ現実の事態が二通りの事柄的意味に類型化される現象であり、事態類型の交替と、それに伴う事態参画者の意味役割の交替によって格形式が交替する。なお、ヴォイスでは動詞が語形変化するのに対し格体制の交替現象では動詞の語形変化が起こらないが、この相違点も、上で述べた、両現象における格形式の交替原理の違いから説明できる。以上の内容を論文として発表した。 (2)壁塗り代換の、文法現象としての特徴を明らかにした。 日本語に壁塗り代換は存在しない(従来「壁塗り代換」とされてきたものは体系的な文法現象ではない)と主張する山田昌裕(2004)「壁塗り代換(spray paint hypallage)―文法現象の存在をめぐって―」(『表現研究』79)を検討し、山田(2004)の挙げる根拠がいずれも成り立たないことを論じた。この検討を通して、壁塗り代換は一定の仕組みで(現実世界の同じ出来事が言語において二通りに類型化されるという仕組みで)成立している体系的な文法現象であることを、改めて明示的に確認した。以上の内容を論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「格体制の交替現象とヴォイスの現象の違いを考察し、格体制の交替現象の成立原理の特徴を明らかにする」という当初の目的が達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
ヴォイスとの比較の視点や動詞の意味の階層性に着目する視点を、他のタイプの交替現象にも適用して分析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度の支払請求書提出後に、産前産後休暇と育児休業の取得に伴う補助事業期間の延長承認を申請し、期間の延長と研究実施計画の変更が認められたため。
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次年度使用額の使用計画 |
補助事業期間延長承認申請書に記した、28年度の研究計画(離脱型の交替の研究の完了、および、所有型の交替の分析への着手)のために使用する。
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