研究課題/領域番号 |
26370527
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
川野 靖子 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (00364159)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 離脱型の壁塗り代換 / 付着・移入型の壁塗り代換 / 餅くるみ交替 / 格体制の交替現象 / 位置変化 / 状態変化 / 動詞の意味類型 |
研究実績の概要 |
(1)「グラスから水を空ける/グラスを空ける」のような、離脱型の壁塗り代換について、以下の(a)~(c)の3点を明らかにした。(a)「グラスを空ける」のような表現はメトニミーによって成立するのではなく、動詞「空ける」が状態変化動詞としての用法を持つことで成立すると考えられる。したがって、「グラスから水を空ける/グラスを空ける」は格体制の交替現象として位置づけられる。(b)離脱型の壁塗り代換を起こすのは、位置変化の下位類である「依存的転位」と状態変化の下位類である「総体変化」を表す動詞に限られる。ここから、この交替は、同じ現実の出来事が、言語の表す意味の世界において、依存的転位と総体変化の二通りに類型化されることで成立する現象であると考えられる。(c)上記(b)より、離脱型の壁塗り代換は、「壁にペンキを塗る/壁をペンキで塗る」のような付着型の壁塗り代換と同じ原理により成立することが分かる。
(2)「巻く」という動詞は「包丁をさらしで巻く/包丁にさらしを巻く/さらしに包丁を巻く」のように格体制の交替を起こすが、「囲う」は「巻く」と似た意味を表すにもかかわらず、「屋敷を土塀で囲う/*屋敷に土塀を囲う/*土塀に屋敷を囲う」のように交替をを起こさない。その理由を考察した。そして、「(~ヲ~デ)囲う」には、「「ヲ格句の事物(内側)―デ格句の事物(外側)」という位置関係を指定する」という意味的特徴と、「「デ格句の事物→ヲ格句の事物」という動きの方向を指向する」という意味的特徴があり、これらの意味的特徴が、格体制の交替の成立を妨げているということを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「離脱型の壁塗り代換の分析を完了させる」という当該年度の目標が達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度までの研究で、格体制の交替現象の分析には、動詞の意味の階層性への着目や、ヴォイスとの比較の視点が重要であることが分かった。これらの視点を残りのタイプの交替にも適用して分析を進め、格体制の交替現象の成立原理を統一的に説明する。
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