現代日本語には、従来から知られている壁塗り代換(例:壁にペンキを塗る/壁をペンキで塗る)をはじめとして、格体制の交替現象が複数存在する。本研究では、これらの現象の成立原理について、以下のことを明らかにした。(1)これらの交替は、いずれも、「同じ現実の出来事が依存的転位と総体変化の二通りに類型化される」という共通の原理によって成立する。(2)交替のタイプの異なりは、それぞれの交替を起こす動詞が表す依存的転位の種類や総体変化の種類の異なりを反映したものである。(3)上記(1)(2)が示すように、格体制の交替現象は、動詞の範疇的意味に階層を考えることで、統一的に説明することができる。
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