研究課題/領域番号 |
26370532
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
山田 敏弘 岐阜大学, 教育学部, 教授 (90298315)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 方言記述 / 愛知県 / 市町村史 / データベース |
研究実績の概要 |
2年間は、ほぼ愛知県方言データの収集、データ化と、その分析に費やされた。 データベースの構築は、愛知県の市町村史の全データのエクセルデータ化を完了した。もっとも早い明治20年の八名郡・設楽郡各村の方言データから近年の町村合併に伴う市町村史ブームで刊行されたデータまで、約5万項目におよぶデータが収集された。これは、岐阜県の同じデータの1.5倍のデータ量である。愛知県内でも複数図書館に別蔵されるデータが2年目の段階でひとつにまとめられたことは、まずもって予定通りの進捗状況と言ってよい。 データベースについて、前回、岐阜県市町村史の方言記述のデータ化を行った際、多く見られたOCRの誤認識等による間違いを減らすべく、今回はアルバイトを使い二重にチェックした。そのため、やや分析の開始が遅れたが、最終年度に挽回できるペースと捉えている。 分析は、すでに部分的に始めている。特に、今回の科研費調査によりあらたに確認された旧額田郡地域の郡誌編纂資料からは、明治時代の国語調査委委員会の影響により始められ、また大正末期の郡役所閉鎖にともなう駆け込み出版に間に合わせるべく方言収集がさかんに行われた時期について、各町村からの調査データが郡誌編纂に十分活かされなかったことを明らかにし、資料の豊富な地域についてまず先行して結果を残すなど、データ分析について地域限定ながら成果を挙げている。 予定していた岐阜県郡上市や飛騨地域と関連する福井県東部の方言データの整理については、愛知県のデータが膨大であったため、ほぼ手つかずで残っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた愛知県内における方言記述のデータベース化は、ほぼ完了した。その結果、約5万項目のデータがひとつのデータベースとして整備された。これは、当初目的としていた平成27年度に愛知県方言に関するデータベース作成を予定通り達成するペースである。 一方で、方言辞典の刊行については、岐阜県方言と比較して1.5倍ともなる分量の項目となった上、また、データ確認にも十分な手間と時間を費やしたため、平成27年度末の段階では実現していない。しかし、すでにその原稿化には着手できており、おおむね予定通りと言える。 また、自らも関わってきた国立国語研究所共同研究プロジェクト「方言の形成過程解明のための全国方言調査」が平成27年度で終了し、そこから愛知県についても方言分布の詳細が掴めるようになったことを受け、そのデータとの比較を通じて地理的分布ならびに時間的変容が理解できるようになった。現在行っている方言記述と比較して、より多くの項目にわたって、精密な動態を掴めることが確認されたことも成果の一部と言える。 なお、本研究は愛知県のみの方言を捉えるのではなく、あくまで岐阜県方言との比較を通じて愛知県方言を掴むというものであるが、その成果として、報告書『岐阜と愛知の方言地図集II』を平成27年度に刊行した。これもおおむね順調に進展しているひとつの証拠となる。本報告書は、岐阜県内ならびに愛知県内の図書館にも配付され、一般市民の閲覧に供される予定である。 福井県東部方言に関しては、平成28年度に重点的に行うべく準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
データベースから記述される項目を選定し、各地での記述の実態、語誌、分布等を個別に記述する作業は、平成27年度後半から少しずつ始めている。前回の科研費(課題番号23520549 代表:山田敏弘)にて刊行した岐阜県方言辞典5巻のように、できたところから記述を始めて分冊として刊行するのではなく、あくまで1冊の、また、岐阜県と愛知県という県境を越えた一体化したことばの分布図を描きながら記述をすることを目指し作業を続けている。 具体的には、当初の計画になかった、データベースからの分布地図の作成に関し、ソフトウェアの開発も外部委託にて始めている。エクセルデータで検索語を入力すると地図上にプロットされて出てくるというものであるが、パイロット版が提出された段階に来ているため、データベースの整備完了により本格的な地図出力が可能になるものと考えられる。分布を視覚的に掴むことは、当初の計画に入っていなかったことではあるが、国立国語研究所共同研究プロジェクト「方言の形成過程解明のための全国方言調査」から得た地図化のメリットを鑑み、よりよい形での記述を目指す。 一方、語誌に関しては、岐阜県方言語彙の記述を活かしながら、より短期間で、岐阜県方言よりも多い語彙数に対応するべく記述を促進していく。すでに岐阜県方言として記述したものについては、その内容を見直し改め、岐阜県方言にないものについては、新たな記述をおこなっていく。愛知県三河地方まで含めたため、語彙の異同は大きくなった。正確な項目数がまだ測れていないが、なるべく包括的に記述がおこなえるよう重点的に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、年度ごとに報告書を刊行する予定であり予算を年度ごと均等に申請したが、平成27年度に中間的な成果を刊行し、最終年度に方言辞典をまとめて刊行することとした。これは、読み手の便宜を勘案した結果である。そのために、物品費ならびに旅費を抑えて使用した。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度であるH28年度は、500ページ以上の方言辞典の刊行に加え、分布を地図上に表示するソフトウェア開発に予算を振り分ける予定である。印刷費は部数との兼ね合いとなるが、赤字にならない程度で適切に使用される予定である。
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