研究課題/領域番号 |
26370539
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松本 光隆 広島大学, 文学研究科, 教授 (20157382)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 漢文訓読語史 / コーパス / 金沢文庫本群書治要 / 経部 / 史部 |
研究実績の概要 |
訓点語彙の意味論的研究ー文脈付き訓点語彙コーパスの作成-の研究課題のもとに、平成28年度には、金沢文庫本群書治要の文脈付きの仮名加点例用例集の作成を、前年度に続いて行った。今年度は、金沢文庫本群書治要の、特に、史部が中心となったが、訓点資料のコーパス作成上に持つ問題点を浮き彫りにする状況に直面した。すなわち、金沢文庫本群書治要の史部は、経部などに比べても、格段に仮名点の加点密度が低くく、例えば、この金沢文庫本群書治要の史部を基に、訓読語コーパスの作成を想定した場合、推読箇所が極めて多いコーパスとなる。つまり、訓読語コーパスとしては、誠に頼りないものとなることが判明したが、漢籍訓点資料の全体を覆って、訓読語コーパスを作成しようとする場合、史部の資料性を措いてコーパスを作成しても欠落のあるものにしかならないと判断された。 経部の場合、仮名点加点の密度は高いが、やはり、無点の漢字があるので、経部訓読語コーパスを作成する場合も、本訓点語彙の意味論的研究ー文脈付き訓点語彙コーパスの作成-においては、文脈付きの用例集を、仮名加点のあるところを漏らさず作成して、その確例の集積の上にコーパス用の総ルビの訓読文を作成して、それを基として経部訓読語コーパスを作成せざるを得ないと言う段階的手続きを経る方向で研究を進めてきたが、金沢文庫本群書治要の史部の場合には、もっと基礎的な段階からの、訓読語採取から始めてみなければならないことが判明した。 よって、従来の方向の修正を図って、原漢文をその語序のまま引用して文脈上での意義解析ができることに配慮した仮名加点語用例集の作成を目指すこととして、平成28年度には、その作業の殆ど完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にも記した如く、金沢文庫本群書治要の経部では、漢字訓読の確例となる仮名加点が、比較的に密で、文脈付きでの用例の採取を、金沢文庫本群書治要以外にも、数種作成して累積すれば、それを基として、蓋然性の高い総ルビの訓読文が作成できて、その訓読文を基に訓読語コーパスが作成できるものとの当初の推定に力を得たが、史部の資料の場合は、仮名加点密度の低い資料も多くて、数量的に多くの資料を選択して作業範囲を大幅に拡張する必要があると判断されるに至った。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、本科学研究費・訓点語彙の意味論的研究ー文脈付き訓点語彙コーパスの作成ーの最終年度にあたるが、上に述べてきたように、問題点の生じた史部の作業を終え、金沢文庫本群書治要も、子部の文脈付き仮名加点部分の用例集の作成を終えて、四年間の研究のまとめの報告書を作成する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、平成28年度の科学研究費補助金の支出を、訓点資料における漢文訓読語のコーパス作成に、入力作業補助として研究協力者複数を任用し、これらへの謝金に集中したため、年度末に至っての残金端数が出て、360円を次年度に繰り越さねばならない事態が生じた。コーパス作成のためのデータ作りは、漢文に付された訓点を基にしながら訓読文を作成し、その訓読文データを加工してコーパス作成のための基礎データを作成すると言う過程で研究遂行しているが、このデータ作りの過程に関わることのできる人材は、訓点資料に対する高度の専門性を持ち合わせて居らねばならず、求めている人材は多くいない。よって、短期間に多くの任用によって一気にデータ作りを勧める訳にはいかず、少人数を長期間雇用せざるを得ず、年度末に遅くまで食い込んで任用したため、補助金の端数処理が充分には行えなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、平成29年度が、本研究の最終年度であるが、平成28年度までに蓄積したデータの処理を行って研究の区切りを着けねばならない。平成29年度も、平成28年度までと同様に高度な専門知識を持つ研究協力者を求めて任用することが、研究遂行の必須条件であって、平成29年度に繰り越した360円は、研究協力者の任用費用に繰り込んで使用する。
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