研究課題/領域番号 |
26370547
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
屋名池 誠 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (00182361)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 活用 / アクセント活用 / 日本語方言 / 日本語史 |
研究実績の概要 |
動詞・形容詞活用、アクセント活用において、それぞれ特異な特徴を有する新潟県佐渡市北川内、富山県氷見市、石川県七尾市能登島向田町、同能登島須曽町、福井県坂井市三国町、長野県東御市で臨地調査をおこなった。 従来、アクセント活用の決定要因として判明していた、①動詞・形容詞語幹の有するアクセント素性 ②活用語尾ごとに登録されている潜在的なアクセント核位置 のほかに、③できあがった〈語〉の長さ が有意な方言が、佐渡、能登島にあること、特に佐渡の一部には①のファクターが問題にならず、②・③だけで動詞・形容詞の活用形のアクセントが決定される方言が存在することが明らかになった。これは広く京阪系アクセントの諸方言が、京都方言が中世末期・近世初期に経験した大アクセント変化と同様の変化を蒙り、その際〈語〉の長さによって異なる結果を生じたことの痕跡であると考えられる。アクセント活用の記述方法の修正・拡張が必要になった。 福井県坂井市三国町はアクセントの揺れの激しい、いわゆる「三国式アクセント」の地域であるが、個人によっては、おなじ活用語の同じ活用形に複数の型のアクセントが許されるものの、「この活用形ではこの型のアクセントだけは許されない」というかたちの消極的な制限があることが明らかになった。有型アクセントが無型アクセントへ向かう中間期特有の体系であると考えられるが、こうした特異なあり方の体系についても今後広く調査・分析ししてゆく必要がある。 能登島向田町は東京方言とよく似たアクセントを有するとされてきたが、動詞・形容詞のアクセント活用は東京方言のものとはかなり異なり、周辺の北陸方言からの変異であることをしめす特徴を備えていることが明らかになった。 動詞活用に関しては、長野県東御市など東信濃ではガ行撥音便が今でも動詞の種類にも限定なく、かつ活発に行われていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨地調査をおおむね順調に行うことができた。 ただし、その際、従来知られていなかった多くの新事実が明らかになったため、本年度はそうした事実の見られる地域に調査地を絞って調査をすることとしたので、当初予定していた広範囲の調査は翌年度以降に譲ることになった。また、第4四半期には、入院・手術のため、予定していた2カ所の方言調査を次年度以降に見送らざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた調査地を可及的多数調査する。特に、活用に関して特異な特徴を示す地点に今後注力する。 また、今年度の調査で明らかになった新事実を組み込んで、記述理論の修正・拡張をはかり、より有効性の高いものとすべくつとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨地調査において、従来知られていなかった多くの新事実が明らかになったため、本年度の調査地域をそうした事実の見られる地域に絞ったので、当初予定していた広範囲の調査は翌年度以降に譲ることになり、次年度使用額が生じた。 また、第4四半期に入院・手術のため、予定していた2カ所の方言調査を見送ったので、その分の旅費も次年度使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度、第4四半期の病気のため見送った調査もふくめ、当初予定していた調査地を可及的多数臨地調査するため、旅費として使用する。
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