本研究は京都方言、熊本方言、琉球久高島方言、琉球与那国方言における格標示の分裂自動詞性について分析した。主な成果は次の三点である。(1)元来内在的主題性を有する動作主項が非主題となれば、脱主題化のための格標示が必要となり、このことが分裂自動詞性をもたらす、(2)脱主題化のための手段には格標示の他にイントネーションもありえ、イントネーションにおける分裂自動詞性も認められる、(3)主語の無助詞現象にも分裂自動詞性が認められる。上記に加え、京都方言と琉球与那国方言の分裂自動詞性が情報構造的に限定されることを考慮すれば、非対格仮説に基づく分裂自動詞性の説明よりもとりたて性に基づく説明がふさわしい。
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