研究課題
古典語も潜在的な日本語であるから、現代語使用の現場で、この言い回しは古典語でどういったか気になるとき、それを知る手がかかりがあれば、古典語を現代に新たな意味で再生させることができる。その気づきを、語彙の面からだけではなく文法の面からも補佐することができれば現代語を古典語に翻訳することもそれほど難しくなくなる。そこで、古典語でかかれた文学作品につけられた現代語訳について、そこにみいだされる現代語の文法機能を表す要素が古典語の原文ではどのような形式で表されているかをしらべ、現代語の機能語からそれに対応する古典語形式をさがす辞書『現古対照文法辞典』を作成することを目的とした。本辞典では、『日本語能力試験出題基準』(2002)に付帯される現代語の機能語リストに基づき、450の項目をさだめ、古典の11の文学作品につけられた現代語訳で、それに対応する相当する古典語の形式をさがし、それを用例とともにかかげた。その成果報告書『現古対照文法辞典』を1,000部印刷し、関係方面に公開するとともに、その使用の具合についての感想の表明を依頼した。また、同報告書には見出し項目がどのような意味・機能であるかを知るために、現代語としてどのような意味であるかをしめす「現代語機能一覧」を付帯した。同報告書の重要性は次のような点にある。第一に作歌等の文学活動、古典語の教育と習得、翻訳実務等に有効に用いられるはずであり、さらには現代語の表現形式と古典語の表現形式の違いを明かにするとともに、古典語の機能別に集約することにも有効なはずである。
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学習院大学計算機センター年報
巻: 16 ページ: 79-97