研究実績の概要 |
【研究の目的】普遍文法の構築に寄与するために,例外的あるいは周辺的言語現象であると見なされることが多い右方移動現象の分析に基づき,併合と運動感覚体系における線形化のメカニズムに対する従来の分析の妥当性を検証し,より説明的妥当性のある分析を提案する。
【平成26年度研究実施計画】基本的統語操作である併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムに関する総合的で包括的な調査と分析を行う。
【研究実績の概要】 日本語の右枝節点繰上げ(RNR)構文の分析として,等位項内に共通に生起するRNR要素以外の要素に顕在的な焦点移動(残余要素の左方移動)が適用されるという分析が提案されているが,1) 島の条件効果に関する文法性の判断に違いがあり,下接の条件効果が観察されないこと,2) 格標識や後置詞の脱落による文法性の低下は島の条件とは異なる要因による可能性があること,3) 左枝効果から属格名詞句が左方移動されることがないことに基づき,日本語のRNR構文は,残余要素に顕在的な焦点移動(左方移動)が適用されて導かれる構文ではないことを指摘した。また,木村(2011, 2012)が対称的RNR構文として特徴づけたRNR構文のRNR要素が等位項内の本来の位置にあることを指摘した。この研究成果を踏まえ,木村(2011, 2012)で提案された3種類のRNR構文([1]RNR要素が等位項内にあり,一致効果が示され,対称性が保証されているRNR構文,[2]RNR要素は等位項内にはあるが,一致効果の見られないRNR構文,[3]対称的述語や関係形容詞や分離先行詞を含む表現がRNR要素となるRNR構文)に対して,RNR構文のRNR要素は等位項内の本来の位置にあり,すべて統一的に削除分析に基づき説明されるとする排他主義的仮説に基づくRNR構文のin-situ削除分析を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究の目的】普遍文法の構築に寄与するために,例外的あるいは周辺的言語現象であると見なされることが多い右方移動現象の分析に基づき,併合と運動感覚体系における線形化のメカニズムに対する従来の分析の妥当性を検証し,より説明的妥当性のある分析を提案する。
【研究の目的】を達成するために,【平成26年度の研究実施計画】に基づき,以下の研究を実施した。 1. Kayne (1994), Nunes (2004), Pesetsky and Fox (2005), de Vos and Vicente (2005), Kasai (2008) 等が提案する線形化に関する分析を幅広く調査した。 2. Chomsky (2005, 2008, 2013), Citko (2005, 2011), Chaves (2011), Larson (2012) 等が提案する併合に関する分析を幅広く調査した。 3. 併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムに関する従来の分析を総合的・包括的に調査し,分析の妥当性を検証した。
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