研究実績の概要 |
【研究の目的】普遍文法の解明及び構築に寄与するために,例外的あるいは周辺的言語現象であると見なされることが多い右方移動現象の分析に基づき,併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムに対する従来の分析の妥当性を検証し,より説明的妥当性のある分析を提案する。
【平成28年度研究実施計画】平成26年度-平成27年度に得られた研究成果を基にして,等位構造及び等位構造以外で観察される右方移動現象の総合的で包括的な調査に基づき抽出された特性の観点から,併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムに対する本研究の分析の検証と精緻化を行う。
【研究実績の概要】[1]動詞句削除において,法助動詞のみが削除されずに生じる時,陳述緩和的意味ではなく,根源的意味が好まれることが指摘されている。この現象に対して,仮説「連結詞beには助動詞beと動詞beがある。」(Williams 1984, Kaga 1985) を仮定する分析を提案した。助動詞を含む文は状態文で,動詞を含む文は非状態文であることが多い。状態文の時,法助動詞mustの解釈は陳述緩和的となり,非状態文の時,解釈は根源的となる。法助動詞mustの解釈の違いは,状態文か非状態文であるかということの帰結である。[2]複数の助動詞が生じる節の動詞句削除に関して,beingの削除が義務的で,beとbeenは随意的であることが指摘されている。連結詞beの語彙的特性に基づく分析を採用することで,(1)be移動を仮定する必要はない,(2)beingの削除が義務的で,beとbeenの削除が随意的であるという現象は,beingが動詞で,beとbeenが助動詞であることの帰結である,(3)vPをフェイズとする動詞句削除分析を提案することができる。[3]右方移動構文として分析されている後置文は,複数の節で構成されている文であり,移動と削除に基づき,分析することができる。
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