海事英語というコンテクストにおいて「理解度(intelligibility)」「わかりやすさ(comprehensibility)」が高い発音はどのようなものかについて、3種類の聴取実験を行なった: (1)リズムと単音のどちらが「わかりやすさ」により多く影響するか調べることを目的として、日本語(音節拍リズム)母語話者と英語(強勢拍リズム)母語話者の発音した海事表現に用いられる文のリズムを加工して入れ替えて作成した音声を日本語母語話者の聴き手に提示し、「わかりやすさ」を測定した。 (2)発話速度が「理解度」「わかりやすさ」にどのような影響を及ぼすかを知るために、英語母語話者が発音した海事英語の質問文の発話速度を加工して作成した音声を日本語母語話者の聴き手に提示し、「理解度」と「わかりやすさ」を測定した。 (3)コンテクストが「理解度」にどれだけ寄与するかを調査するために、海事英語の場面を絵で描写したものを見せながら文を聞かせた場合と絵を見せないで同じ文を聞かせた場合とで、どれくらい「理解度」に差があるかを測定・比較した。 他の英語使用場面と同様に、様々な母語話者・非母語話者を話し手と聴き手の両方が海事英語を使用しているのが現状である。「理解度」「わかりやすさ」が高い発音は何かを明らかにするために、今後も一層の実験的研究が必要となるが、その基盤となる考え方(例:機能負担量、国際共通語としての英語)についてまとめた。将来的にはこの考え方に沿った聴取実験を行い、日本語を母語とする海技士志望者が習得すべき優先度の高い英語音声は何かを追究していきたい。
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