研究課題/領域番号 |
26370563
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮本 陽一 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (50301271)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 数量詞 / 否定 / AGREE / CP / 主語条件 / 付加詞条件 |
研究実績の概要 |
今年度は、Oseki and Miyamoto (2015)のもとで日本語を母語として獲得する子供の文法における主語の振る舞いについて検討した。特に主語位置の数量詞と否定の作用域関係に注目し、ドイツ語を母語として獲得する子供の、主語がCP SPECに位置すると考えられる否定文の解釈と比較した。存在数量詞については日本語とドイツ語の間で平行性が見られ、日本人の子供の文法において、大人とは異なり、存在数量詞が否定よりも狭い作用域をとりやすいことがわかった。この読みの存在は日本語の数量詞が再構築できることを意味し、移動の存在を示す。つまり、日本語を母語として獲得する子供の文法において主語がCP SPECに位置していることを支持するのである。これに対して、普遍数量詞においては平行性が見られなかった。これは二言語でCP SPECへの移動の誘因が異なるためであると示唆した。
また、付加詞条件については、当該条件の効果の有無がAgree関係の有無によって決まるとするMiyamoto (2012)の主張をさらに検討するために、自動詞文における引用句の振る舞いに注目した。自動詞が対象であるため引用句が典型的な項ではあり得ない。それにもかかわらず、VP削除と「そうする」による置き換えのテストから引用句が内項と同じ振る舞いを示すことを明らかにした。さらに、引用句からの要素の抜出が可能であることを指摘し、この事実が典型的な項・付加詞の対比からでは説明できないことを指摘した。分析としては、Saito (2015)の日本語の「と」に関する分析に基づき、引用句を導く動詞がQuote素性を持つと考え、引用句を導く「と」との間でAgree関係を結ぶと提唱した。これが正しければ、Miyamoto (2012)の枠組みにおいて引用句からの抜出も容認されることが正しく予測されるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の期間内に摘出領域条件について文処理の研究成果が多く発表されたことを踏まえ、今年度は、主語条件について日本人ならびにドイツ人の子供を対象に実験を行い、前年度構築した理論を支持する結果を得た。また、付加詞条件についてもMiyamoto (2012)を支持する新たなデータを発掘した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は主語条件と付加詞条件を総括的に扱うため、Oseki and Miyamoto (2015)で提唱された理論の精密化を図る。近年の理論発展を考慮し、ラベル付け (Chomsky 2013, 2014) の観点から分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用の資料ならびデータ整理について支出額が予定額を多少下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
理論言語学関係の図書購入、学会発表 (国内外)、雑誌投稿に使用予定。
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