研究実績の概要 |
本研究では, CPがphaseを形成すると仮定した上で, Fukui (1984), Hasegawa (2005), Saito (2011)等の先行研究に基づき, 日本語の主語はCP SPECまで上昇するとした. この移動の結果, 主語は次のphase領域から可視的になるため, 抜出が可能になるのである. この主張を支持する証拠として, 日本語を母語として獲得する子供の文法において, 主語がCP SPECに位置していることを示す実験結果を挙げた.
付加詞については, 自動詞文と顕在的な内項を伴う他動詞文における引用句の振る舞いを検討し, 特に引用句を伴う項削除現象 (Funakoshi 2016) ができないこと並びにクレフト構文において引用句が焦点化できないことに注目し, CP領域において引用句がAgree関係のもと認可されているため, 抜出については項のように振る舞うと結論付けた.
これまでの研究成果から, ミニマリストプログラムの枠組みにおいてφ素性, Quote素性等の素性(の有無)とAgree操作を仮定することによって, 摘出領域条件の効果は正しく予測できることが明らかになった. Chomsky (2013, 2015) のラベリングの枠組みにおいては, ラベルが決まらない XP-YP 構造の場合, 素性共有(feature sharing)が必要であるとされる. ここで, Hornstein (2009) に従い, 素性共有がない場合, XP-YPはラベルが付与されないことを理由に解釈されないのではなく, 修飾関係, 叙述関係等によって解釈はされるものの, two-peakedの構造しか許されず, YPはAgree関係を結ぶこともなく, 不可視的になると示唆した.
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