研究実績の概要 |
最終年度では、懸垂分詞由来表現のうち、前年度まで調査を行い発表してきたSpeaking of whichとGrantedによる応答機能の出現についての論考内容をまとめた。Speaking of whichについてはもともと懸垂分詞表現であったものから、次第に、whichの指示内容が必ずしもそれまでの文脈の中に明示的には存在せず、逆に前の文脈全体を漠然と指す状況や全く無関係な内容へと推移することを考察し、[speaking of which]全体でチャンク表現を成していることを確認した。またgrantedについては直前の内容を一旦認めつつもそれに対立するとみなされる自分の意見を譲歩的に述べる用法が主であったが、そこから必ずしも「対立」という論理的な関係に限定されず、単に前段の内容と異なる路線の話へと展開する際に使われている例を考察し、対立関係が次第にゆるめられて単純な話題転換へと拡大されていくことを確認した。 以上の内容は二本の論文として、それぞれひつじ書房からの『構文の意味と拡がり』および開拓社からの『現代言語理論の最前線』において、編者をつとめ、また個別の論文を執筆し、刊行することで成果の公表を行った。 また、これまでの4年間で調査研究してきた言語現象(Speaking of which, Granted および Supposing節の脱従属化現象)など)に共通して見られる言語変化およびそれに伴う現象について、国際認知言語学会(タルトゥ大学:エストニア共和国)にて発表した。その概要は、現在分詞を伴うものは話者による主観的な行動のなぞりを経由して、過去分詞を伴うものは譲歩の解釈を経由して、それぞれが異なる道筋を通って対人関係的な意味を会得していくことをまとめたもので、懸垂分詞表現がたどる構文化へのプロセスを示した。この内容については英語による論文化を進め、投稿準備中である。
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