本研究は、コミュニケーションにおける発話の推意導出に貢献する推論規則の特定とプロセス制御に関する一般制約の規定を目標とした。日英語の文脈における多様な推意のデータ分析の結果、Sperber and Wilson (1995)の「オンライン発話処理で働くのは演繹の削除規則のみである」という主張に反し、オンライン推意導出には、抽象化(帰納)やアブダクションも貢献していること、関連性誘導による発見的発話解釈過程が、その推意導出に対する制御機構として働いていることを明らかにし、貢献する推論規則が持つ特性(聞き手の知識を拡大するか否か)に基づき、分析的推意と拡張的推意の2分法を提案した。
|