本研究では,生成統語論の枠組みで提案された「素性継承パラメタ」仮説に基づいて英語の主語位置の史的推移について実証的に調査するとともに,その変化を駆動するメカニズムを説明することを目指した。その結果,以下の点が明らかとなった。(i) 古英語から初期中英語では主語の情報ステイタスに基づいて2つの統語位置が主語に対して利用可能であった。(ii) 上位位置と下方主語位置がともに下方に推移した結果,後期中英語から初期近代英語にかけては,2つの主語位置が自由変異となった。(iii) 後期近代英語以降は,主語の統語位置が1つに統合された。またこの分析の妥当性を他の通時的変化や共通時的変異によっても検証した。
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