研究課題/領域番号 |
26370571
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
藤原 保明 聖徳大学, 文学部, 教授 (30040067)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | there 構文 / 存在文 / 虚辞の there / there の代名詞的機能 / 通時的分析 / 中英語 / there 挿入 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究の最大の成果は、there の用例の年月日まで特定できる『パストン家文書』のすべての there について分析し、there was no man there, though there had been such here, let there be but few words of this pardon のように、there が場所の副詞ではなく虚辞として確立していたと断定できる例が1460年前後に多く用いられていることを突き止めたことである。それと同時に、1400年頃のチョーサーの作品や『マンデヴィル旅行記』では、In that country are the people who have only one foot のように、there を用いずに「前置詞句+be動詞+主語名詞句」という構文によって存在を表す例が多かったが、『パストン家文書』ではこのような構文はまれであることも明らかにした。これら2つの事実が指摘できたことにより、たとえば In Horai there is neither death nor pain. のような文は歴史的には 「there-挿入」という規則の適用結果であるとみなすことができ、それゆえ、There is neither death nor pain in Horai. という構文の通時的発達過程も明確に示せるようになった。 このように、今年度の研究成果として、従来の there構文の史的研究において明確ではなかった発達の段階と時期の詳細を解明する大きな手掛かりが得られたことにより、存在文の史的研究を今後、急速に進展させることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
存在を表すthere 構文の there が場所の副詞ではなく虚辞として確立している決定的な証拠となる例が『パストン家文書』の1471年の手紙で用いられていることが確認できたことに加えて、場所を表す前置詞句の直後に there を挿入することが there 構文の史的発達の過程の解明に極めて重要であるということが判明したことから、現代英語の場合と同じように、「場所の前置詞句+be動詞」だけでは存在が表せなくなった時期を特定すれば、there 構文の史的発達の過程が完全に解明できることになるが、この時期の特定はそれほど難しくはないからである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、there 存在文の通時的発達過程として、① On the table is a book. > ② On the table there is a book. > ③ There is a book on the table. という3つの段階を想定し、1400頃から1900年頃までの約500年にかけて、優勢であったのはいつ頃のどの段階であったのかについて分析と考察を行う。このようなアプローチによる there 存在文の史的研究は知られていないことから、分析結果が待ち望まれる。なお、分析対象となる文献は1400年頃はウィクリフ派訳聖書、『マンデヴィル旅行記』、『カンタベリ物語』、それ以降の約100年間は『パストン家文書』、その後については、『カヴァデール聖書』、シェイクスピアの作品群、『欽定訳聖書』などである。最終年度であるが、可能な限り多くの文献を対象に分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の書籍の代金が予定より安価であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度購入予定の書籍代を調整する。
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