研究課題/領域番号 |
26370572
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研究機関 | 了徳寺大学 |
研究代表者 |
磯野 達也 了徳寺大学, 健康科学部, 教授 (10368673)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 語彙意味論 / 事象構造 / スケール構造 / 意味表示 / 意味の合成性 / 語彙的アスペクト / 移動と変化 / 瞬時性 |
研究実績の概要 |
本研究は、語、句、文の意味表示にスケール構造を導入し、意味の揺れや変化を形式的に一般化することを目指している。例えば、瞬時的な意味を表す動詞breakは、普通は*The coffee cup was breaking.のように進行形では用いられないが、主語にThe TVを取るとThe TV is breaking.(テレビが少しずつ壊れつつある)という解釈で容認可能となる。 スケール構造は、Hay et al.(1999)などで提案されて以来、形容詞や状態変化動詞の意味を捉えるために用いられているだけでなく、移動の漸次的な変化を捉えるためにも有効であることが示されてきた。本研究では、漸進的な変化を表す動詞は中間段階をもつスケール構造を、breakや「すれ違う」のような瞬時的な意味を表す動詞は両極のみをもつスケール構造をそれぞれの意味表示にもつと仮定している。さらに、語が他の語と句や文を作るときは、動詞のスケール構造と主語名詞句やその他の語がもつスケール構造が生成語彙論が提案する共合成や意味矯正といった操作を受けて、句や文の意味表示を作り上げると考える。これによって、「*2台のスポーツカーがすれ違っている。」が容認されず、「橋で新幹線がすれ違っている。」が容認されることが説明される。「新幹線」がもつ長さのスケールが動詞の意味表示と合成されることで、瞬時的な「すれ違う」が時間幅をもつのである。同じように、The TV is breaking.でも、テレビの機能に関するスケールが名詞TVの意味表示にあると仮定することで、本来瞬時的な動詞breakと共起して時間幅をもつことを説明できる。 このように動詞のみならず、名詞の語彙表示にもスケール構造を仮定することで、移動動詞、状態変化動詞と時間幅の関係を形式的に統一的に説明することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
語彙アスペクトに関する先行研究や言語事実をスケールと意味の合成性の観点から再検討する必要があるが、その対象が広範囲に及ぶため調査と分析に予想以上に時間を要している。また、当初、動詞と名詞について意味分析を行う予定であったが、様々な言語現象を考慮する必要があるため、形容詞、不変化詞、前置詞なども分析の対象に含める必要があり、情報の収集に時間がかかっている。 平成26年度は勤務校での担当時間が当初の予定より年間で5コマほど増えたこと、所属先の変更に伴う予定外の作業入ったことにより、本研究にあてられる時間が減ったことも研究が予定よりも遅れたことの原因である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、動詞と前置詞の合成とスケール構造の関係について調査・分析を進める他、名詞の意味表示にスケール構造がどのように関わっているかを先行研究を含めて研究を行う。また、当初の計画で2年目に予定していた日英語以外の言語における意味の合成とスケール構造の関係についても予定通りに調査・分析を行うことにしている。 今年度から新しい所属先となったが、担当授業や業務が突然に増える可能性は非常に低く、本研究にあてる時間を確保して昨年度の若干の研究の遅れを取り戻すことは可能である。データの処理などに関して研究補助者を短期的に採用することも考慮に入れながら、当初の研究目的を達成できるよう研究を進めていくことにしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属先変更に伴い、平成26年度中の機器、図書の購入を見合わせたため。
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次年度使用額の使用計画 |
データ処理のためのパソコンと関係図書を平成27年度中に購入することにしている。
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