研究課題/領域番号 |
26370573
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
小倉 美知子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (20128622)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非人称構文 / 再帰構文 / 古英語 / 中英語 / 英語史 |
研究実績の概要 |
平成27年度はまず5月に第9回国際中英語学会に plenary speaker として招待されていたため、そこで非人称構文と再帰構文に関する発表を行った。これは従来の私自身の研究に対し新たな見地からの研究も行われているため、「本当は」どのような歴史的変化が二つの構文に起っていたのかを示し、フロアにも問うものとなった。近年の理論言語学者の間では写本やファクシミリに戻らず、古英語の電子コーパスに現代英語訳の付いたもののみを用い、editions にさえ触れていないため、適切でない用例を挙げた著書や論文が増えている現状があり、その態度に警鐘を鳴らすことが目的の一つであった。結果は学会のproceedings に載ることとなった。その際、アメリカ、ポーランド、ドイツ等の学者とも議論出来たことは有意義であったし、急きょ頼まれて2つの発表の司会をしたが、そのどちらも私が以前に扱ったdouble modals や 現在調査中の進行形の問題を扱っており、いよいよ迂言形についてまとめることの意義を感じた。7月には国際アングロサクソン学会で一つのセッションの司会を務め、スコットランドの友人達との友情を深め、研究に対する意見交換ができた。国内では11月に日本英語学会で関係節の問題に関する招待発表を行った。これもある意味、現代には残っていないが中世前・後期を通じて用いられ続けた構文であり、さらに調査を続けている。12月には日本中世英語英文学会で10世紀後半から13世紀にかけての動詞形態の混同について発表した。この中には非人称動詞と人称動詞の混同、否定の意味を持つ動詞に見られる目的節内での否定の重複など、現在の研究テーマからの用例の一部を紹介した。すでに論文は投稿済みで掲載も決定しているが、刊行は来年度になるため、そこで報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際中英語学会における発表、日本英語学会と日本中世英語英文学会での発表と、今年度は学会発表により今までの研究成果の一部を公表することによって、国内外の反応を見ることが出来、さらに研究を進めることの意義を見出したことが大きかった。特に、ポーランドでの学会で、東欧の若手研究者達が私の研究結果を読み、自身の研究のテーマとして扱ってくれていることは、かなりの自信となった。また、国際アングロサクソン学会での司会を引き受けたことで以前からの仲間の信頼を得られたことも成果である。国内で中世英語を研究対象とする者が減少するなか、海外ではこの分野が盛んになっているところもあるので、貢献できれば幸いと思う。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は最終年度となるため、研究成果をまとめることに専念したいが、まずは5月に日本英文学会で現代の再帰構文の要素であるself の歴史を解説する発表から始める。次に7月の国際英語正教授学会における古英語部門のco-chair としての役割を果たすとともに、本会前のMedieval Symposium と本会との2つの発表において、研究成果を公表することに力を入れる。9月には収集した用例のうち、写本の読みをチェックする必要のある箇所を調査すべく、London, Oxford, Cambridge の図書館を訪問し、またアングロラテンの専門家でもあるJoyce Hill 教授の意見を伺うべく、Leeds を訪問する予定である。そのあとは執筆にとりかかりたい。
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