研究課題/領域番号 |
26370575
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
堀田 隆一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (30440267)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 英語史 / 近代英語 / 中英語 / 現代英語 / 歴史言語学 / コーパス / 言語変化 / スペリング |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、現代英語の深い理解に資するべく近代英語の動態について様々な角度から調査することである。当初の計画では、取り上げる問題として (1) 名前動後、(2) 3単現の -s、(3) ラテン語彙の借用の3点を掲げた。当該年度は、近代英語期における疑似形態素 -st の発展、綴字の標準化(特に語源的綴字)、助動詞 may の祈願用法の発達という問題にも調査対象を広げ、国内外での学会での口頭発表および論文の公表という形で、研究成果を公にした。 8月にイギリスで開かれた国際英語史学会における口頭発表 "The Taking Off and Catching On of Etymological Spellings in Early Modern English: Evidence from the EEBO Corpus" では、初期近代英語期のコーパス EEBO を用いて、語源的綴字の発達に関する実証的な調査の結果を発表した。11月の横浜国立大学で開かれた日本英語学会のシンポジウム "Language Contact and English Functional Items" では、中英語期の複数名詞接尾辞 -s の発展を歴史社会言語学的な立場から論じた。12月の日本歴史言語学会では、「英語における祈願の may の発達」と題する発表で、助動詞 may のいわゆる祈願用法について、なぜどのようにして近代英語期に発達したのかを考察した。いずれの研究もコーパスを用いた実証的な調査であり、直接・間接に本研究課題に寄与している。 また、当該年度には、過年度の研究成果が2つの論文となって公表された。近代英語期の疑似形態素 -st と中英語期の分かち書きに関する研究である。いずれも国際的に評価の高い学会や研究グループと関連した論文集の一部をなしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、(1) 名前動後、(2) 3単現の-s、(3) ラテン語彙の借用の3つの問題を同時並行的に進めるという計画で開始した。当該年度は、これらの研究課題について過年度に行なってきた研究に立脚しながらも、近代英語期における疑似形態素 -st の発展、綴字の標準化(特に語源的綴字の発達)、助動詞 may の祈願用法の発達といった関連領域へも関心と調査対象を広げ、その途中結果を公表してきた。 このように研究対象を広げたことで、最終的な研究結果を得るのに当初予定していた以上に時間とリソースを必要とし、研究期間を1年間延期することになった。しかし、全体としては、当初からの方針である、中英語に関する知見に基づいた新たな近代英語の研究という方向性は一貫して堅持しており、その方向での現在までの進捗状況は概して順調ということができる。当該年度は本研究課題の総決算として、その研究成果をまとめ、公表することに専念する。
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今後の研究の推進方策 |
期間延長の認められた当該年度は、本研究課題の総決算の年度と位置づけ、研究結果の整理と公表に専念する予定である。研究課題と関連するデータベースの構築・公開、研究論文のみならず教養書の執筆を通じて、研究によって得られた知見を社会に還元していく。 研究課題は、当初に掲げた (1) 名前動後、(2) 3単現の -s、(3) ラテン語彙の借用の3課題から発展し、近代英語期における疑似形態素 -st の発展、綴字の標準化(特に語源的綴字の発達)、助動詞 may の祈願用法の発達などへも広がってきたものの、研究の計画と手法に関しては大きな変更はなく、当初掲げた方針のもとで、当該年度も過年度と同様に研究を遂行していくことができると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
延長願いを出したが、実際上はほぼ使い切っている。
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