研究計画のうち、「(a)コーパスの中で完成済みの分節音部分を用いた記述的研究」については、先行研究で作成されていた、コーパスに含まれる発話の一部をについてのアメリカ人による復唱実験のデータを、本研究で得た分節音ラベリングと突き合わせ、音声的逸脱と聞き誤りの関係を見るという研究を海外学会でポスター発表した。利用可能なデータの一部しか対象にできなかったため、現時点で一般論を展開することはできないが、恐らく一般的傾向の一部をなすと思われるデータをいくつか得ることができた。 「(b) 韻律的特徴の表記を追加することによるコーパス全体の完成」については、次の(c)を優先して行ったため、完了には至っていない。 「(c)UME-ERJの欠点を補った文セットによる音声データの収録」については、新たな文セットをLabov (1966) のパッセージを改変することにより作成し(英語で356語)、研究分担者となっている別プロジェクトの研究代表者に依頼して、2名分の録音を済ませた音声データを得た。この一部に韻律ラベリング(Post and Delais-Roussarie 2006 の枠組みに基づいてH27年度に考案したもの)を行うことによりその妥当性を検証し、また日本語話者による英語イントネーションの特徴の候補となる事象も見いだした。これを海外学会で口頭発表した。 上記の別プロジェクトでは更に数名の話者を録音し、同一話者による日本語の発音の提供も受けることになっており、このプロジェクト終了後の研究で活用する予定である。
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