研究課題/領域番号 |
26370578
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
石井 透 明治大学, 文学部, 教授 (30193254)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 局所性 / 言語間差異 / パラメータ |
研究実績の概要 |
原理とパラメータ理論において提案されたパラメータという概念は、人間言語が持つ普遍性を捉え ながらも多様性(言語間差異(crosslinguistic variations))も同時に説明する、つまり「記述的妥当性と説明的妥当性の緊張」を解決するものである。その誕生以来、パラメータは生成文法における中心的 な研究課題の一つであり、現在でもその重要性は変わらない。以前の枠組みでのパラメータは、普遍 的原理または機能範疇の素性に付随することにより言語機能内の計算システムに違いを生じさせ、言語間差異を説明していた。しかし、現在の枠組みである「極小モデル」では、言語機能内の計算シス テムには言語間差異が存在しない。従って、言語機能内の計算システムにパラメータが入り込む余地 はなく、パラメータをどのように定式化すべきかが課題となる。本研究では、移動(Move)/内的併合 (Internal Merge)などの長距離依存関係に対する「局所性条件」の言語間差異に焦点を当て、極小モデ ル下でのパラメータを用いた解決策の提示を目指し研究を行っている。これまでの研究では、以下の2点に関して研究を行った。一つ目は、局所性条件の中でも、その効果に言語間差異が存在する「wh 島の制約」・「主語条件」・「左枝分かれ条件(Left Branch Condition)」などに限られ、「複雑名詞句制約」・「付加詞条件」などには言語間差異が存在しないことを明らかにした。二つ目は、言語間差異が存 在する局所性条件は、その局所領域(wh 島や主語などの領域)の韻律構造に言語間差異が存在するが、 言語間差異が存在しない局所性条件の局所領域(付加詞や複雑名詞句などの領域)の韻律構造には言 語間差異が存在しないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極小モデルでの局所性に関するアプローチ及び統語構造・局 所性条件と韻律構造との関係について、本研究にその成果を随時組み込みながら、「空範疇原理効果」の「狭義の統語論」での定式化と「下接条件効果」 及び「取り出し領域効果」の音韻部門内での定式化についても、引き続き議論を詰めた。その上で、「下接条件効果」及 び「取り出し領域効果」が、音韻部門内での外在化過程で韻律構造に適用される制約によるものであ るという方向が正しければ、「wh 島の条件」・「主語条件」などで見られる「下接条件効果」及び「取 り出し領域効果」に関する言語間差異は、各々の言語の韻律構造の違いに起因することになることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
局所性条件の言語間差異を説明することができる、極小モデル 下でのパラメータ理論の構築を行う。「進化的妥当性」を満たすパラ メータ理論構築を目指し、外在化過程パラメータによる分析を提案する。その際、Berwick and Chomsky (2008)の wh 疑問文と語順に関する示唆、Richard (2008)の語順に関する理論など、これまで提案された 外在化パラメータの考え方について、それらの設定に至る過程の議論を、それを支えた具体的な言語 現象と共に再度詳細に検討する。さらに、Baker (2001; 2008) , Roberts and Holmberg (2010), Boeckx (2011), Gallego (2011)など、極小モデルでのパラメータ理論の定式化に関して議論している論文も詳細 に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表のための海外出張を年度内にもう1度予定したが、学会開催日の予定変更関係上次年度に行われることになったために、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度予定していた学会発表のための海外出張を行うので、それをもって使用する計画である。
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