研究課題/領域番号 |
26370580
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
都築 雅子 中京大学, 国際教養学部, 教授 (00227448)
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研究分担者 |
山添 直樹 名城大学, 大学教育開発センター, 講師 (00555641)
西尾 由里 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (20455059)
奉 鉉京 信州大学, 全学教育機構, 准教授 (50434593)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本語訛りの英語 / リンガフランカ / 韓国語母語話者 / 英語母語話者 / 中心特性 / 子音 / 母音 / 強勢アクセント |
研究実績の概要 |
本研究は「アジアのリンガフランカとして、日本語母語話者の英語音声面における中心特性(コミュニケーションの阻害要因に関わる特性)の確立」を目的としている。日本人理系研究者よる学会発表という状況を実験設定として、英語母語話者を対象に聴き取り実験を行い、分析・考察した。その結果、インテリジャビリティを阻害する日本人英語音声の中心特性として(1)l・rの誤発音, (2)摩擦音の発音の弱さ (3)気息音がないなど、破裂音の発音の弱さ, (4)母音の長さの間違え, (5)強勢付与の欠如および非実現、が挙げられることがわかった。これらの成果を論文にし、大学英語教育学会の学会誌JACET Journal No.58 (2014)に掲載された。 しかしながら、アジアのリンガフランカとしての中心特性を確立するためには、聴き取り実験の対象者を英語母語話者のみならず、非英語母語話者に広げることが必要である。第一段階として、韓国語母語話者3名によるパイロット実験を行い、その成果を第7回ELF(2014,9月アテネ)で発表した。聴き取り実験よる転記を分析・考察した結果、(i) 日本語訛りの英語は、英語母語話者と同じくらい、通じづらいこと(ii)破裂音・摩擦音の弱さ、母音の長さの間違いが、通じにくさの主原因であること(iii)流音の誤発音、強勢アクセントの非実現は、英語母語話者の場合と異なり、それ程、通じにくさの原因とはならないことなどが、暫定的な結論として出てきている。現在、実験を続け、データを蓄積しているところであり、その結果を分析し、英語母語話者よる結果を比較し、共通点・相違点を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
内容のある英語文の聴き取りという実験設定であるため、被験者として、英語力の高い非英語母語話者(TOEFL550点以上)が必要である。そのため、被験者を集めるのに少し苦労している。今後、分担者のBong氏(韓国語母語話者)が、韓国へ出張し、実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 韓国語母語話者を対象とする聴き取り実験を行い、データを蓄積している。具体的には、Bongは韓国に出張し、実験を行う予定であり、都築・西尾は日本国内の韓国語母語話者に対して実験を行う予定である。これらの実験データを分析し、韓国語午後話者に対する日本人英語訛りの中心特性を特定し、その上で、英語母語話者に対する中心特性を比較・分析し、共通点・相違点を明らかにする予定である。これらの成果をThe 21st Conference of the International Association of World Englishes(October 8-10 at Bogazici University in Istanbul,Turky)で発表し、論文にまとめたい。 (2) 中国語母語話者を対象とする聴き取り実験を、張氏(中京大学国際教養学部教授)と連携して、中国の復旦大学などで行えるよう、交渉中である。またフィリピンのタガログ語母語話者を対象とする聴き取り実験の可能性について、大和田氏(成徳大学准教授)と協議中である。 (3) 日本人英語に慣れていない英語母語話者を対象とした日本人英語音声の聴き取り実験の結果を、分析・考察を行い、コミュニケーションの阻害要因に関わる中心特性を抽出した。その結果を、日本人英語に慣れている英語母語話者を対象として実験結果と比較し、Tsuzuki, Nishio & Bong(2013)で、発表した。具体的には、5つの中心特性(①流音の誤発音、②破裂音・摩擦音の誤発音および発音の弱さ、③母音の長さの変更、④強勢アクセントの間違いおよび非実現、⑤トーン・ユニット関わる間違いと中核強勢の間違い・非実現)の中で、①気息に欠ける語頭の破裂音の弱さ、②複合語アクセントの非実現が、インテリジャビリティを特に著しく低下させることがわかった。これらの特性は、英語母語話者が日本人の話す英語にいくら慣れたとしても、ミスコミュニケーションの要因となる重大な中心特性であると言える。以上の研究成果を、現在、論文にまとめている。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者の西尾が、予定していた国際学会での研究発表を行わなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、発表を行い、使用する予定である。
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