研究課題/領域番号 |
26370585
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
仁科 浩美 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (10431644)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 口頭発表 / 質疑応答 / アカデミック・ジャパニーズ / コミュニケーション・ブレイクダウン / 聞き手 / 教材研究 |
研究実績の概要 |
本研究では、生産管理の一つ、問題解決型のCAPD(Check-Analyze-Plan-Do)サイクルを活用して口頭発表時における質疑応答コミュニケーションに関する研究を行い、質疑と応答とがより有機的に遂行される教材の開発を目指している。 平成26年度はCheckとAnalyzeを行った。前回の平成23-25年度の科研費研究においては口頭発表者側である学生の意識や行動に注目して分析したが、今回はもう一方の質問者側に焦点を当て、どのような意識で発表を聞き、同じ空間を共有しているのかを半構造化面接法により調査した。発表の場での主たる質問者は大学の教員であるため、調査協力者は大学院生を指導する教員である。質問項目は、質疑応答というものに対する考え・意識、実際の学生への指導状況、留学生と日本人学生との違い、自分自身の外国語での発表時の経験等である。その結果、質問者となる教員は、質疑応答を学生を評価する時間ととらえており、教育的観点から、発表者である学生の発表を肯定的に促す態度で臨んでいることがわかった。しかし他方では、専門用語や知識の差により発表者である学生が戸惑っていることを意識する発言は少なく、この点において認識のズレが感じられた。 また、近年出版されている国内外の大学生向けアカデミック・プレゼンテーションに関する教材を収集し、教材分析も行った。英語母語話者である学部生や、英語による発表者を対象にした教材では、多少の差はあれ、聞き手とのコミュニケーションにおいてコミュニケーションブレイクダウン、あるいは、窮地に陥った場合の対処法が扱われている。しかし、日本語学習者あるいは日本語話者への教材では、この点が解説レベルにとどまり、実践的な教材はほとんどなく、この点を充実させた教材を開発する意義は十分あると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、学生が口頭発表を行う時の質問者側となる、教員への意識や考えを調査することを主目的とした。調査は14名の協力者を得て面接を実施することができた。インタビューデータを質的に分析することにより、各協力者が考える口頭発表・質疑応答は、学生が考えるよりも寛容でかつ教育的側面からとらえられていることが判明し、一定の成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、教材作成に向けて指導項目を検討する。前回の科研費研究から得られた成果と併せ、学習が必要と思われる知識やスキルに関する項目を列挙する。発表時の質疑応答だけでなく、セミナーなどでも利用可能であるよう、取り扱う項目も範囲を広げ、検討する。 次に紙ベースでの教材の試作を開始する。最終的に開発する教材は、非言語コミュニケーションも考慮した内容を想定している。そのため、映像をDVDに収録した教材を併用した内容を目指しているが、どのような場面を映像にすることが有用であるか、扱う内容とともに今後具体的に検討していく。
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