本研究のねらいは、第二言語学習者が留学中に日常的に撮影した写真資料とライフストーリーインタビューデータの分析を通じて、留学中の第二言語習得経験とアイデンティティの変容について状況論的観点から考察を加えること、また、写真資料を活用したナラティブ研究法を開拓することにある。本研究期間内には、特に、①留学中の学習者は目標言語を介してどのような実践コミュニティへアクセスしていくか、②実践コミュニティへの参加のし方はどのように変化していくか、③それに伴って留学中の第二言語アイデンティティはどのように変化していくか、に焦点を当てて研究を行った。平成26年度は、最新の先行研究を精査しつつ方法論を精緻化するとともに、日本に留学中の外国人留学生を対象に横断的及び縦断的データ収集を開始した。平成27年度は、開始した調査を縦断的に継続するとともに、並行してデータ分析を開始した。平成28年度は、これまで収集したデータのデータベース化を図るとともに、データ分析と理論化を試みた。縦断研究では、4~9年の長期留学者が留学中に撮影した写真データを対象に、写真に表れる活動場面、被写体の種類、その経年的変化に量的・質的分析を加えた。その結果とインタビューデータの分析結果を総合し、ケーススタディとしてまとめた。横断的データはデータベース化し、テーマ分析を行った。この際、オーストラリアの大学の研究者と共同のデータ分析も実施し、国際雑誌に論文を公刊した。さらに、映像ナラティブアプローチに関心を持つ海外の研究者たちと共同で書籍の出版計画を作成し、海外の出版社に投稿、採択をいただいた。本研究の成果を土台として今後国際的研究に発展させていきたい。
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