社会のグローバル化に伴い、国の内外を問わず、教育現場で学校における教授言語を母語としない子どもたちが増えている。本研究は、一般の教員が学級内の多様な言語背景を持つ子どもたちに配慮しながら教科指導を行う力を育成するための方法を探ることを目的とする。平成28年度の成果は以下のとおりである。 ① 海外の非英語母語話者への英語指導(EAL)教育現場及び研究者へのインタビュー:平成27年度に行った調査から英国におけるパートナーシップティーチング(以下、PT)に着目し、調査を進めた。PTは一般の教員とEALの専門家がともに授業を組み立て実践することを通して教員の指導力を育成する、実践を伴う教員研修と位置付けられている。EAL関係者からの評価は高いが、開発当時とは教育現場のニーズ、子どもたちの背景が異なる中、多様なPTの在り方が検討されていることが分かった。オーストラリアのEAL生徒教育研究者から、通常の学級で教科指導を行う一般教員への研修の重要性とともに、彼らの指導力を高める方法としてEAL専門家と教員によるティームティーチングが有効との指摘があり、PTの意義が確認された。 ② 国内では、PTの実現可能性について、複数の教育委員会担当指導主事・日本語指導担当教員にインタビューを行った。また、小学校1校において3回の実践を試みた。小学校の実践について現在、授業およびその前後のミーティングを分析中であるが、教科担当教員はいずれも「大きな学びがあった」ことを語っている。一方で、日本語担当者からは「教科担当者と英語/日本語指導担当者が対等の立場で授業を作り実践する」というPTの原則について、不可欠ではあるが、現場の教員の認識とは温度差があったとの指摘がなされた。これらは指導主事らの意見とも重なるものであり、教育現場に伝える際には意義と共に具体的な実施モデルを示すなどの工夫が必要と考えられる。
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