本研究では、初級文法領域の認知診断テストを開発し、有益なフィードバックを与えるWebテストシステムを構築することを目的に行った。 平成26年度は、既存のテスト項目を参考に予備テストを行い、その結果、2種類のテスト(テストA、テストB)を完成させた。テストA(66項目)は初級文法全般を出題範囲とし、テストB(70項目)は助詞問題に特化したものである。開発したテストAとB2種類のテスト結果の分析とアトリビュートの検討を行った結果、テストBすなわち助詞問題に特化したテストを採用することとした。 平成27年度から平成28年度にかけて、助詞問題にあわせたアトリビュートの再検討、テスト改定、テストの実施を数回繰り返し、53項目からなる最終版を完成させた。最終的なアトリビュートは、1)基本的なコロケーション、2)存在や動作の場所、3)存在や動作の時、4)複文、5)省略補充、6)対比、7)視点、8)文脈、9)主題化である。 平成28年度、最終版のテストを完成させ、中国の大学で調査を行った。テスト結果を分析し、認知診断モデルにより各受験者の能力推定を行った。また、フィードバックの内容と方法を検討し、受験者の一部に、各アトリビュートの結果と今後のアドバイスをフィードバック情報として提供した。さらに、テストの分析結果をもとに、Webテストのシステムを検討し、eラーニングプラットホームであるMoodle上にWebテストを構築した。本Webテストでは、あらかじめ集めた解答データ(中国の大学で収集したデータ)にもとづいて推定しておいた項目パラメータを用いて、各受験者の各アトリビュートの習得確率を求める方法を採用した。これにより、個々の受験者がシステム上で解答を終えた直後に、結果(各アトリビュートの習得確率)を提示することが可能となった。平成29年2月に国内の大学でWebテストの運用実験を行った。
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