最終年度に当たる平成28年度は、平成26年度、平成27年度にモンゴル、中国の研究者の協力により収集した様々なデータ(言語適性:言語分析能力、音韻的短期記憶、ワーキングメモリ、学習成果:文法、聴解、読解、発話、作文)を分析し、国内外の学会、研究会で口頭発表、パネル発表を行った。また、研究期間内に実施した実証研究と文献研究に基づき講演を行うと同時に、論文として発表した。 言語類型論的に見て日本語と類似する文法体系を持つモンゴル語(格標識が重視される言語)話者と、異なる類型の中国語(語順が重視される言語)話者では、日本語習得に対する言語適性の影響に異なりがあるのかどうかを、研究期間全体を通して明らかにしようと試みた。その結果、どちらの言語の話者であっても学習初期には音韻的短期記憶が重要な役割を果たしていることが明らかになった。その一方、言語分析能力に関してはモンゴル語母語話者の学習成果にはあまり関連が見られなかったのに対し、中国語母語話者の学習成果、特に文法の成績と強い関連が見られた。このことは母語と目標言語の言語類型論的類似性によって言語適性の必要度が異なる可能性を示唆するものである。 現在、先行研究の知見と本研究で明らかになったこれらの結果を統合し、第二言語習得における言語適性の影響について執筆中である。また、研究期間中に収集したデータをより詳細に分析し、さらなる知見を得たいと考えている。
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